第31章 灰色の日々
こう……、ぐっ、と両手を天高く上げて喜んじゃったりしてね!
「随分と喜ぶわね……、まっ!あそこの焼き鳥美味しいもんねー」
歌姫は腕を組み誇らしげにうんうんと頷いてる。
あの焼き鳥屋、すっごい美味しかったんだよねー!京都に来る度に行きたい!あっ、でも他の店も回って色んな店舗を試してみたいんだけれどね?
るんるん気分で明日に思いを馳せながら、今日も一切の連絡の無い私の携帯画面を確認して。
……前だったら、京都に来た時とかすっごい数の通知が入ってたのにね。
一体、彼は今、どこで何をしてるんだろう。
今日もどこに居るのかも分からないまま、部屋でひとりになる時間を過ごす寂しい夜を過ごすんだ…。寂しさからぎゅっと心臓を掴まれたような感覚。薬指とお腹の悟と繋がるものがあっても心がどうしても悟を求めてしまい、寂しい気持ちになりつつも名残惜しく携帯をしまった。
その確認からしまうまでの動作を歌姫はじっと見てたらしく、「ねえ、」と私に声を掛けた。目が合えば少し言葉を濁して、少しだけ笑って。
「……なんか進展あった?」
『いえ…なーんも。東京の学長だとか傑さんだとか、その辺りからも新情報の入荷もナシ!ですね~…』
「そっか。そうよね、なにか進展あったら、ハルカは喜んでたでしょう、あんなやつでも大切に想われるモンなのねー…。あいつにハルカはもったいないわあ~…」
くあっ、とあくびをするのを片手で隠す歌姫。私は窓辺を見た、室内からカーテンを締めたその暗い空が見える隙間。古いせいか、その窓から僅かに吹き込む風でカーテンが揺れてる。そのひらひらとした動きへ視線を向けてる歌姫が眠そうに「ほんっと、何考えてるんだろうね?五条」と文句を零してた。
……うん。何を考えてるんだろ、悟。
怒りなんて京都に来た時から一週間程度ふつふつと沸騰する鍋のように熱せられ、今はその火は止まり、少しずつ落ち着いていけば今度は不安と悲しみが静かに私を満たしてる。
自他ともに認める最強でもどこか誰も知らない場所で野垂れ死んでるのかもしれない悪い想像。私一人で探したくも国外か、国内かすらも分からなくって探す目星がない。なにもかも不明だった。