第31章 灰色の日々
「あっ!ハルカ!失礼しまーー……げっ!?
…したッ!」
元気な虎杖は視線が私から東堂に移り、まるで場面巻き戻しのようなステップで出ていった。入室する事無くピシャン、と虚しく閉まるドア。
それを許さぬは東堂。凄い勢いで立ち上がり、椅子ががた、と倒れそうなくらいに傾いて元に戻る。
「待ってくれブラザー!共にハルカに治療をして貰おうじゃないか!これぞ青春の一ページだろう!?なあ、ブラザー!」
「俺はブラザーじゃないっつーの!」
「同中から同高と友情の証を……して、…っ…──…」
走り去る東堂と、遠くの虎杖の声。負傷者だけど元気に廊下を走ってらぁ。
なんで虎杖が京都校に居るのかは多分、虎杖がこっちから東京に要請掛かって来てたんだろーな……。それで東堂と喧嘩だか鍛錬だかして(一歩的に)こういう現状になってる、と。私はひとりそう推理をして、誰も座っていない椅子とふたりの消えたドアを見やる。
『……医務室になにしに来たのさ…?』
遥か彼方、廊下じゃなくて窓の外からふたりの声が未だ微かに聴こえる。
──結局は疲れたような虎杖と達成感のある東堂のふたりが医務室に肩を組んでやってきて額の怪我や体の打撲痕等の治療は出来たけれど、治療前から治療後に掛けて一方的な暑苦しさとそれを全否定するやりとりを間近に見せられて、早く部屋に帰りたいな~……と、私はひとり飴玉を舐め、ふたりが落ち着くのを待っていた。