第31章 灰色の日々
「おいおい…オマエは俺をなんだと思ってんだ?呪術師の前に俺も人間だぞ、怪我だってするモンだけどな?」
学長の書き途中の治療証明書を退け、新しい紙をバインダーに挟む。いつも通りだし、なにも難しい事を書くわけじゃないもんね。新しい証明書にすらすらと東堂の情報を書いていく。
『……で、今回はどのような?』
視線は紙面から上げて彼の額、血が流れてる箇所に注いでる。
不注意でぶつけたってよりも喧嘩のような気がするんだけど…。
真顔の東堂は親指でその額をびっ、と指した。なんかちょっと誇らしげにも見えるんですけれど?名誉の負傷か??
「おう、ブラザーとの手合わせ中にな。互いに頭突き、互いに傷付けあった、ペアルックならぬペア・スカーだ!」
『……その、虎杖……ううん、ブラザーは?ペアなら彼も今、傷を着けてるって事ですよね?』
東京に行って喧嘩してきたんか?どういう交友関係だよ、と首を傾げる。
腕を組み、目を閉じ、なにやらうんうん頷きながら微笑む東堂。思考がどっかにトんでいってるらしい……。
何度も頷き、一人百面相をしていく東堂。最終形態として斜め上を見上げた彼はつう…、と頬に涙が流れ、キメ顔をしながら目をゆっくりと開く。
「ふっ……さっすがブラザーだ。風のように走り去り、俺だけここに来ている…」
『気が触れている……。
あー……アガリビトには効いたからこういう精神汚染も効くかなあ…』
「おいおい、何を言っている?俺は正常だぞ?」
そのタイミングでこんこん、というノック。
東堂がニッ!と口元に弧を描いた。私も何となく察してる。
「噂をすれば、だッ!」
パチン、と指を鳴らす東堂。その音がマジックみたいにさ、ドアがガラガラ…と控えめに開いていき一歩足を踏み入れるのは虎杖。片手を上げ、額には東堂と同じ傷。お前ら京都でなにやっとんねん。