第31章 灰色の日々
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京都に来てはや一週間。私がよく引き起こすトラブルメーカーをこの一週間に発動する事なく、呪術界で悟の失踪以外の大きな事件が起こる事も無く。平穏の日々の中教室で授業を受け、携帯で呼ばれれば医務室へ赴く、という日々を過ごしていた。
とにかく、こっちの補助監督生とは治療以外であまり関わりなくて、主に東京に居る私としては大して交流なんてないし、座学の授業の前後の私語や車での移動以外、怪我でもしない限り関わりがない。だからこそ彼・彼女達が信頼出来るか分からなった。
それは以前、こっちの補助監督生が高専を裏切ったって件があったから疑心暗鬼になっちゃって日々警戒を怠らないようにして過ごしてるせいなのかもね。
……ヒサカイはなんであの男が、というレベルで打ち解けていたから尚更だった。長く過ごしたのは東京って事もあり、学生はともかく補助監督生には特に注意して過ごしてる。高専内くらい落ち着きたいのにね。
今日も医務室に学長からの連絡が入って呼ばれて、急ぎじゃないしと速歩きで向かう。
医務室に行けば楽巌寺学長が片手を上げて「すまんの」と言って先に待っていた。
おや、なんか今日もお土産を持っていますねえ…!と学長の治療を直ぐに終わらせ、お茶を入れつつ医務室に常備した隠したお菓子を出してのんびり過ごして…。
学長が持ってきたものは食べ物だけど、直ぐに食べるってモンじゃないからさ。
「部屋に戻ったら食べるといいぞ?」
『はい、頂きます!』
ずっしりとした袋を持って、少し酸っぱい香りが漏れてるからきっと、お漬物なんだろうな、と察してる。うわあ、どういうのだろう?漬物って色々あるからねー……。白米がイケるタイプだと嬉しいんだけれど。
コンコン、とドアがノックされる。
学長からドアへと視線を向ける。私と同じく学長も振り返って。
「失礼する、と…先客が居たか……?」
ガラ、と開けたドアから巨体が現れる。それは筋肉の壁…じゃなくて東堂。額に血が一筋流れてる。
えっ…東堂?東堂も怪我するんだなあ…とても珍しい人物が医務室に訪れたもんだ。
私が驚いていたら学長も「ほぉ」と笑みを込めた声を漏らしてる。
「ふむ、東堂が来るとは珍しいものもあるの……儂も長居したし、治療も終わったから御暇させて頂こうかの」
『はぁい、またいつでもお呼び出し下さいませ!』