第31章 灰色の日々
296.
──悟からの音沙汰がないまま、なんの情報も入って来ないまま。ついに自分の判断での京都行きが決まった。
金曜日の時点でダメ元でもう一度、私から悟が居なくなった事についての相談を持ちかけた人達に話を聞いたけれど。やはり皆悟についての新しい情報は入って来ないみたいでさあ……。
そのまま一週間が過ぎてしまい、悟も居ないのでひとりでふらふらする事も出来ない私は東京から京都へ移動が出来ない。なので以前のように歌姫がこちらに来て(休みではなかったらしく、巫女装束の姿。聞くに私を迎えに来る為だけに来たってワケで東京から京都にとんぼ返り……だとか)歌姫と一緒に新幹線に乗っている。
隣の歌姫がはあー…、とどデカいため息を吐き、身体を背もたれに預けてる。
「……アイツマジなんなんだろうね?」
『なんなんでしょうね~……』
不安は不服へ。不服が不安へと繰り返す日々。
なんで、どうしてって怒りも沸いて正拳突きで抑えきれない衝動。これは格闘技のコンボをやらねばならない。毎日がどう綺麗に決まるかの技構成や、特に痛いコンボだとか、掛ける側の身体に負担の掛からないコンボだとか色々考えてる。
昨日の夜にサトールへと『今、この流れを考えてるんだけどどう?』と聞くと「ゴッジョ!」と元気に頷いてた。きっとサトールの元となった術師故に彼自身もなにか思う所があるんだろう。喜んでコンボ構成相談にノッてくれていた。
……相談にのるっていっても、あまり知識はないらしく頷くくらいだけど!
すっきりしないままに京都に向かう新幹線の中。
心の中では不安はずっと拭いきれないけれど、歌姫と一緒に居れば口を開けば一週間以上放置プレイしてる蒸発した旦那さんについての愚痴も出るモンです。
「ハルカ、今妊娠中じゃない?」
『はい』
じっと心配そうに彼女は私を見て、腹部を見て。顔を上げる。心配そうな表情は変わらないまま。
「あいつの事だからそう簡単に危険な目に遭うだとか死んでるって事はないと思うけど。今、ハルカ自身はその…健康上?精神的にもさ、大丈夫なワケ……?」