第31章 灰色の日々
そのサトールの話をきっかけにどんどんずれていく話題。あっという間に話は最近のコンビニ弁当の嵩上げ商品となり、個数が減っただとかパッケージに騙されただとか盛り上げっていれば本日の任務先の旧道、立入禁止のバリケード前に停まる車。
「ジャッジャーン!さて、おふたり共!目的地に着いたッスよ~!」
今回の任務はこのバリケードの先のトンネル。夜だと非術師と鉢合わせするからあえての昼に帳を降ろして、といつも通りの手順でいく。報告だと私達だけでも充分な等級の呪霊が目撃されてる。
停車した車からシートベルトを外した新田が車から降りる。私と野薔薇も新田に続き車内から降りて。
……ジャジャーン、て口に出す人、悟以外で初めて見たわ。
雪のちらつく天気。そりゃあそうだ、一年で一番寒い二月なんだし冷え込んでる。バリケードから見える薄暗いトンネルから更に冷たい空気が流れてきて、私も野薔薇も…新田も。皆自身の身体を抱いてる。
『「「さっぶ!」」』
うえっ、こんな寒い中長時間は無理っすわ!凍え死ぬ、さっさと終わらせよ!
皆気持ちは一緒なのか、アイコンタクトでそう思ってる、いや頷きあった。
速攻、新田が帳を降ろし出す。私と野薔薇も視線を合わせ、頷き合ってバリケードの元に近付いた。
頑丈なバリケード。肝試しとかする非術師たちはフェンスをよじ登る小学生の如くバリケードを越えてるらしい。あちこちに靴のゴムの後だとか、泥汚れがこべりついてるね…。
もちろん、今回呪いを祓ったからって暫くすればまた肝試しとかされて、恐怖がこのトンネルに蓄積されていく。だからこそチェーンカッターでフェンスを切って直せない状態にしたら、これまでバリケードを越すのを躊躇っていた人達もすんなりと入れてしまう。
呪術師が入る時も同じく彼らのようにバリケードを越してただろうけれど、そこはサポートに特化した私の呪術の出番って事で。
攻撃性はややいまいち、利便性だけは誇れる呪術の"怒髪天"でこちらからあちらがわへ渡す脚立を式髪を編み、産み出す。何度か使った事があるから強度を知ってる野薔薇が早速その脚立へと片足を乗せる。
「さんきゅ、さっさと終わらせてあったかいラーメンでも食べに行くわよ!」
『了!』
先に進む野薔薇。野薔薇がバリケード先に辿り着く頃に私も編み込んで硬い足場が連続した脚立を上がっていき、反対側へと下っていった。