第31章 灰色の日々
不安でたまらない。不安でたまらないから、私は周囲に助けを求めた。あの日の出来事を学長や七海、傑に直接なり携帯越しに話し、彼らに悟の動向を知らないかって聞いた。やはり携帯を置きっぱなしだから、私の相談した人達は直接悟に会ってない。誰も悟についてなにも分からないから余計に不安になって部屋で私と呪骸のサトールのひとりと一体で、悟をもう三日も待ち続けてる。
私達の会話を聞いていた新田がルームミラーからこちらを見ていた。
「五条さんどこ行っちゃったんスかね~」
「新田ちゃんもここんところの先生について何も分からない?」
頬杖を止めて運転席側に顔を出す野薔薇。運転手の新田も「ないッスね!」と予想通りの答えを返していた。
この件については私的に信用出来る間での問題にしたい。だって、悟が居ないって分かった瞬間から私は上層部に道具として扱われるから。
幸いなことに任務の多くを人に回し、自身で任務をする時はきちんとこなすけれどフリーダムな性格の彼。数週間消える、という事はよくある事だけど、ただ今回の誰にも言わずに消えたのは異常。
学長や傑は何か言いたそうだったけれど…。
補助監督生に何か伝えてからどこかに消えるってのは無いか、悟の場合何か伝えるとしたら伊地知だろうし。
進行方向の信号が黄色。減速していく車は停止線前で赤信号に止められてしまった。
新田がぐるん、とこちらを振り返る。
「そういえばハルカさん。今週末の休日に荷物を纏めてまた以前みたいに京都に二週間って話が朝の打ち合わせで出てますけど、どうします?」
『えっ』
悟の居ないこんな時に京都に行くのかあ。
出張が嫌なんじゃないよ?結構好き。京都の生徒や歌姫、マリアと気の許せる人たちが居るもんね。あっちの学長とは京都に居る時ほぼ毎日医務室に通ってくれるし、雑談を挟むけど悟には上層部との繋がりが深いと聞いているから学長については少し注意するとして……。
京都の高専が嫌なわけじゃないけど、信じられるって人が東京よりも少なくなるし、京都に行くことを悟に伝える事が出来ないからそこで何かがあった場合が心配なんだよねえ……。
きっと弟が居るからいつもよりもワントーン高めな声色なんだろうな、とハンドルを握る新田を見た。