第31章 灰色の日々
295.
ピピピピ、ピピピピ……。
朝が来て、アラームを止める為に手探りで携帯に手を伸ばしてスヌーズを止めないと…。さわ、さわさわ…と指先で探って、眠い頭で朝だ…とカーテンのしめられた部屋で外から差し込む朝の明るさにゆっくり瞬く。
『……』
狭いベッドの上で期待を持ってその大きな体も、体温も悟の存在を探しても、そのどちらも無くて。
代わりに大きな姿ではなくとても小さな呪骸が潜り、私が起きたと分かれば小さな体に合わないベッドから這い出していく。そうすればほら、もうなにも居ない。私の部屋には彼が居ない。
隣に触れてくるぬくもりも、定期的な呼吸も、訳の分からない悪戯も無駄口も。キスも、朝からのえっちの誘いも……。
眠そうではにかみながらの「おはよう」って言葉もなくて。
……二週間ぶりに会った時間はとても短かった。そして何も言わず、部屋に戻らないままに悟の居ない日常が進んでいく。
──今日も悟の居ない日が始まった。
今日は外で任務、出先でご飯を食べるからお弁当はナシ!で、一緒に組むのは野薔薇。新田の運転で私達は任務地へと向かってる。
この任務に連れて行く意味がないかもしれないけれど、呪骸のサトールをマフラーに絡めるように連れてきてる。意味がない、というのはいくら私が危険な目に遭っても、通報が悟の携帯に通知がいくシステムが無効だって事。
あの日、悟が部屋にすぐ帰るといって帰って来なかった今日より三日前の事。彼は財布程度しか持っていなかった。今日までの私が居ない間に部屋に戻った形跡もなく、私自身の携帯になにか連絡があるってわけでもなく。
帰ってこないからって電話を掛けたら部屋に置いていった悟の携帯が鳴っていた。機種変とかも考えたけど、悟の携帯宛に伊地知や傑から連絡が入ってる所を見ると手続きをしたってわけじゃない(もっとも別の携帯が存在するならこっちは別にいいや!って放置してるのかもしれないけれど……)
だからこそ、サトールが危ないよ!とか(どういう通知文面なんだか知らないけど……)悟の携帯に通知を入れたとしても、その携帯の持ち主は一切気が付く事はない。今の小さな彼の仕事は寂しさを紛らわせてくれる事と、万が一の時に仕込んである小さなナイフを取り出すくらい。
朝から元気な新田がハンドルを握って運転をしてくれるのは良いけれど。
新田の運転がこれが結構荒いんですわ…。