第30章 彼と共に彼を待つ
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定期検診と役場に行って、寮への帰り道に買い物をしてから高専へと向かってる。
出掛ける前もテンションは高かった悟だけれどそれ以上に今日の結果を知り、帰りのテンションがおかしい彼は車庫に車を収め、車から降りた所で助手席へと回り込んできた悟。私が自分でドアを開けた所で「手ぇ、出して?」と重ねた手と絡む指。彼に引かれて車から車庫内に出て立ち上がった所で歯を見せて笑う悟が何故か自身のマフラーを外し始めてる。
「ふんふ~~ん♪……冷えは良くないよ?レディー、僕のもしとき~?」
私だって十分にマフラーは巻いてあるというのにさ?そこにさらに悟が巻いてたものを外し、追加でぐるりと巻いていく。口元が隠れる程度だったところに追加のマフラーで鼻上まで積み重なる布地。サトールも共にねじ込まれ、「ムー」と呻く声がマフラー内から聴こえる…。
……これじゃあ暖かいを通り越して頭部だけミイラになるわ!と途中でノッてきた悟の腕を掴む。
『これ以上は見えなくなるっての!』
「あ、そう?目元も寒いのかな~って」
『……それなんて五条悟??』
一瞬固まった後に、への字口になってちゃんと目元が見える程度に整えてくれて、最後に「ヨシッ!」と指差し確認をして。現場猫を若干意識してんのかなー…。
ブイゼルからゲッコウガにされてしまった中、後部座席のドアを開けてガサガサと買い物袋を持った所で素早い勢いでその荷物がひったくられる。「荷物持ちは僕にまかせな!」って。
ほぼ手ぶらの私は後部座席のドアを閉めた。片手に全ての買い物袋を持った悟がもう片手に持ってる鍵を車に向けてロックをしている。
「さっ、ハルカ。外は寒いし早く部屋戻ろうよ。転ばないように気を付けて行こうね?キミはドジやらかす所あるんだし」
日が落ちてきてる今、雪が積もっていなくても地熱はどうなのかは靴裏で分かるもの。冷たいならば綺麗に整えられたコンクリートの床でもこべりついた水蒸気で滑るとかもありえる。
でもさ、車庫内はそういう作りじゃない、コンクリってか砂利多めなセメントの床で滑りにくいし。他に気をつける場所なんていったら限られる。私、悟が言うほどドジじゃないと想うんですがねっ!
『心配、ありがとさん!……でも、ドジはやりたくてやらかしてる訳じゃないんだからね?』