第30章 彼と共に彼を待つ
不安定だった心。レイプされてその時の子なんじゃないかって不安から解き放たれて、大好きな悟との間に授かったと喜んだも束の間。
そのなんとも言えない状況が物語ってる場面に出食わしたら、嬉しくて舞い上がっていた感情がいともたやすく墜落し、転がり落ちていった。
……そう言えば、きちんと確認してなかったっけか。
『……もしもさ?今私のお腹に居るのは悟との子なのは確かな事だけれど、もしもあの死んだヤクザに残されたものでデキてしまった子だったら……
その時は悟、どうした?』
ハンドルを握ったまま「うーん、」と前方を見てる悟の横顔。
さほど時が経過しないうちにちら、とこっちを見て、口元には自信たっぷりの笑みを浮かべてた。
「もしも、の話ねぇ……。僕の血を引かなくても、半分はオマエの血が流れてるだろ?しかも、身体自体はハルカの中で一生懸命に作られていくんだ。オマエ自身が、相手がどっちであれ僕の子供じゃなくても産みたいっていうのなら僕はちゃんと父親として愛情もって接するし、どうしても嫌だっていうならハルカの意志に従うよ?」
『……悟、』
私が言い掛けた所で片手をこっちに突き出し制止した悟はそのままに言葉を続けていく。
「でもさ、それは今じゃあ有りえない話だろ?
今、ハルカのお腹に居るのは間違いなく五条悟と五条ハルカの子供なんだ。子供は僕らが愛し合いその幸せの中で授かってるんだし、既に授かった宝物だ。もしも…って嫌だった出来事なんて考えちゃ駄目だろ?
幸せな時は幸せであって良いんだし、それが悪い事じゃない。もしももしもって、嫌なことで幸せを多い被せるようにその幸せに謙虚にならなくって良いのよ。だから僕は包み隠さず幸せをアピールしちゃうなー!」
目の前の信号が黄色になり、減速して停まる車。赤信号だから悟は私に顔を向けてにっ!と笑ってる。
それはそれは、とっても幸せそうに見えて。
「ハルカ。僕はね、最っ高に幸せで嬉しいよ!キミと一緒に過ごせる毎日がハッピーだ!」