第30章 彼と共に彼を待つ
『大げさすぎるわ、パレードまではしねえよ?てか、ドイツ帰りならなんでフランス語で挨拶したん?日本語チョトワカンナイのに?』
あれか?蟹の画像にウニって文字入れしてタコってルビ振るわけわかんない事してんのか?なに悟混乱する術でも食らってるの?
ツッコミながらも授業中とはいえ、がた、と立ち上がった私。何故ならそれは嫌な予感がするからで。虫の知らせってか、妖怪レーダーってか。胸騒ぎがするからさあ~…。
そんな私がひとり起立をした事を見て、口をへの字にする悟。眉がちょっとつり上がってる。
「おや?なんでキミは僕から逃げようとしてんのかな~?」
「おい、ハルカ。今は授業中だぞ?席に着け」
『すいません!でも、この人、今からやらかすような気配がするんです!』
直感だけれどってか、私のコレは高確率で当たるんだ、何故ならいつもの習慣だから!
ほう…?と硝子がなにか呟く中。
じわ、じわ…と歩を詰めてくる悟に片手を出し『ステイ!』と言いそろりそろりと後退りする私に、なんだか虎杖がガタッ!と椅子だか机を鳴らしている。そして何故かテンションも上がってて、拳を突き上げて。
「わ、出たコレ!ジュラシック・ワールドでみたやつだ!」
……いや、ウン……じわじわ近付く悟を制止するのはラプトルを制止する主人公みたいだけれどさあ?
それを聞いて、映画を色々観るのが好きな彼は声をワントーン上げた。テンションはカンスト、これを下げるのには苦労しそう。
「わー、嬉しい!僕、ラプトル。ブルーって呼んでネッ!」
『虎杖には担任がヴェロキラプトルに見えるんかい!そしてあんたはそれを快く受け入れんなよ……。
私はオーウェンのように制御しきれないっての!』
「ちゃっかり理解してんじゃねえか~、この~!」
自分の席から離れながら、教室に入ってきてじわじわと距離を詰めようとしてくる、テンションがいつもよりもおかしい悟から逃げる。
当社比のご機嫌度150%、にこにことご機嫌な悟は皆の前でいつもの呪文を唱えた。
「ほら、帰ってきたよ!ただいまのちゅう、しよっ!」
「キッモ」
「今誰!?僕の事キモイって言ったの!!?」