第30章 彼と共に彼を待つ
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明後日で丁度二週間となる、となると彼の性格を考えれば明日には帰ってくるのかな。
週末の今日の座学に特別授業が入っていて、科目としては保健体育。それはとても大切は授業であり今回の授業では補助監督生ではなく硝子が医務室から教室へとやってきていた。そう、人体に詳しいからね、補助監督生よりも硝子が適任って事よ!
硝子は教壇に立ち人体についての臨時の授業としてテキストを読み上げながらチョークで書き出してる。それらをみんな真面目に聞いてメモして……って授業を受けていた。
私の机にはノートとペンケース。そしてサトールが座ってノートを覗き込んでる光景。かつて私も保健体育を受けた事があっても今回の授業は成人した今でも特別なものであり、しっかりとノートに書き写してた。虎杖も伏黒も野薔薇も真剣に、命に関わる事だから硝子が黒板に書き出した人体図や文字を静かに写してる。
虎杖が消しゴムを掛けまくる理由は分かる、「絵が上手く架けねえ!」って嘆いてんだもん。
明日は休日。何時くらいに悟は帰ってくるんだろうな?硝子の声だけが教室内に響く中でドタドタという足音が廊下から聴こえてきて、どこのどいつだよ、授業中に走ってるおバカさんは…とドアを睨んだ。消去法で考えれば"まさか"を想像して目を大きく見開きドア方向を見つめる。今はドア前に止まるんじゃねえぞ……。
祈りも虚しくドア前でキヨの絶叫…もとい、キュキュキューッ、と急ブレーキみたいな靴音。躊躇いなくガラッ!と急に開け放たれるドア。
そこには両腕に紙袋やらビニール袋の取っ手に手を通し、如何にもお土産めっちゃ買ってきましたという風貌のいつもの姿でサングラスの悟。散歩楽しかった!っていうワンコみたいな顔してる、満面の笑みの悟のお帰りだった。
「ボンソワール!マ・シェリー!」
『フランス帰りか』
冷めた視線でツッコミをすれば、口角を上げた悟は自身を親指で指して自信満々に鼻息荒めに言い切った。
「いいえ、ドイツです。グラッチェ!カムオン!日本語チョトワカル!
……ちゅーことで可愛い生徒のみんな~!おまたせ☆皆の大好きな五条先生のお帰りだよ~!餅まきもライスシャワーも控えてくれて構わないよー、でも僕、こんなにおみやげいっぱい買ってきたしね、喜んで凱旋パレードくらいはしちゃっても良いよっ!花びら砲、準備してたりしてないの?寂しいな~!」