第30章 彼と共に彼を待つ
目を少し擦ってから、直接的になにか私に用事があるのかな?と対面した先のグリーンのサングラスの奥を覗き込む。
姿勢をぴんとして表情をあまり変えず、ふう、と息を吐く七海。
「特に用事がある、というわけではないですが」
『あー…じゃあ、悟になにか言われてます?』
無言の七海。それは肯定だろうな、と察して海外に居る悟はあらゆる周囲の人間に私の様子を見てくれない?と伝えているんだな、と感じて。
心配性だなあ、と机の上に座って見上げるサトール…彼のモデルとなった人を想う。寝ている間、机の上にずっと居たサトール。重い体故に、机から降りれば私の服とか体をよじ登らないと上に戻ることは出来ない。机の下にぽーん、と落ちたならばいつものフリーダムが待ってるだろうにそれをせず、一時間ほど静かに見守り続けたって事、だよね。
……うんうん、立派な護衛じゃんか!七海は黙ったままに私やサトールを見ている。きちんとした仕事をしてるサトールに嬉しくて手を伸ばして小さな悟を撫で回した。
「ヌー…ゴッジョ!」
「なんですか、そのやり場のない憤りを感じさせる見た目の呪骸は」
『えー?何をおっしゃる、可愛いじゃないですかー!』
すっげえ言い様…!と左右の眉の間隔が縮まった七海を驚きつつ見た。
……いらつくかぁ~…?可愛いと思うけれどなあ。悪戯好きは玉に瑕、けれどもこうしっかり見守ってるんだし!
引っ込めた手、机の上に両肘をつきながら腕を組んで少しばかり前傾姿勢をすると、椅子が僅かにギッ、と静かな部屋で鳴る。
『心配性な悟が学長に頼んでくれた呪骸ですよー、悟が悟自身をモデルしろって注文してて名前をサトールって言う子なんですけど』
「ゴッジョ!」
力強く頷くサトール。お返事が出来て偉いね~?と撫でて顔を上げると七海が嫌なものでも見る瞳をしてた。表情、サングラス越しから感情漏れてますよ?眉間にどぎつい皺が寄ってますけどそんな表情をさせるものをどこに感じるんだろう?
カチャ、とサングラスを指先で整えた七海。