第30章 彼と共に彼を待つ
見えなくても中はあまり缶が捨てられていないのか、他の缶に当たる音ではなくゴミ箱の底面に当たった音がした。確かに今の時期、飲み物飲みたい!って夏ほどは思わないもんね。
私の隣に戻ってきた乙骨は真剣な表情で、きっとさっきの事を思い出してる。
「……ハッカイが作られて、他人に譲渡した、という事ですね。コトリバコについては座学で習ったけれど、この呪物に関しては非術師界にも情報が流れているし、ハルカさんがコトリバコの話についてを知ってるのなら話は早いですけど……。
絶対にこの件に関わっちゃいけないですからね?」
その言葉に私は強く頷いた。コトリバコがどれほど危ないのか。特に今の私には非常に不味いって事も。
これの対応には生徒ではなく、生徒よりも可能ならば成人した男性達が対応するんだろうな、と思いつつ。
「これは特級呪物ですから。高専に保管するための確保であれば僕ですらも任務に当たるかも怪しいです。破壊して対処するのなら、未成年でもいけるとは思いますけど、やはり女性は当たらないと思いますし……とにかく。もうすぐで二週間、五条先生も帰ってくるんですから大人しくしていて下さいね?いいですか、大人しく、ですよ?」
『うわ、二度も言った!えっ、私ってそんなにヤンチャしてるように見えます??』
「………見えないですよ?危険に近付かないようにって事で…」
すっ…と目を反らす乙骨。言わずとも分かるその態度よぉ……、私の事ヤンチャしてるように見えてんでしょ?
『目を見て言え~??』
苦笑いする乙骨を覗けば小さく「すいません…」との言葉。いや、マジで怒ってるわけじゃないからね?ホントだよ?
こんなやり取りの中、私の手に触れていたココアの缶は長話の中ですっかりとぬるくなっていた。