第30章 彼と共に彼を待つ
「専門ではないし、さっきみたいな特定の場所でやったわけじゃないけど。現地で相手の術師に尋問まがいな事なら何度か。全然口を割らなきゃもちろん拷問も……」
ほー、さっすが特級呪術師!知っている中で一番若いのに色々経験してんだな、と尊敬の眼差しを向けて甘いココアをひとくち飲んで。
はっきり言って急だったし、悟が居ない状況でするなんて思ってなかった尋問についての感想を経験者である彼に聞きたくなってきた。
正直言って、私のこの初めての尋問に点数を付けるとしたら100点満点中、30点くらい。下手くそにも程がある。うまくなるにはやはり経験者に聞いた方が良いよねえ……。
今は優しそうに見える乙骨。先程の豹変した姿で拷問するんだろうな、と脳裏に想像しながら彼を見る。
『ああいうので良かったんですかね?初っ端から尋問が駄目だったから拷問にして…。拷問だからって、爪を剥がすとかそういうのがポピュラーくらいしか知らなかったからああやってたんですけど……』
尋問と拷問が頭の中でごっちゃになってるのだけれど。
相手が情報を吐くために痛めつけるのは主に体の末端っていうか。私にはリスクがあるからだろうけど、小さな痛みじゃ拷問とは言い切れないんじゃないのかなあ……。
拷問、となればまた違う激痛を伴う相手を傷付けていく方法があるだろうけど。今まではどうやっていたんだろう……。
じっとこちらを見てる乙骨。右手に持つ缶を左手に持ち替え、下唇を少し出して難しい顔をしてる。
「うーん……正解なんて僕には分からないけれど。少し冷酷になったほうが良いかもしれないですね…」
『やっぱり?まだ相手に悪になりきれないんですよねえ~……。リベルタの構成員だとか、私の情報を売って酷い目に遭わされたヒサカイだとか。直接に恨みがない人に、この人は悪いことをしました!だから尋問して隠してる情報を吐かせてください、だなんて言われても』
側に居たのが乙骨だから良かったけれど。悟の前で悪になりきれない。仕事だからといって傷付ける姿を見られるのは抵抗がある。一度リベルタでボスを殺そうとした事があった、その時に冷静な彼に止められた事もあった。
ヒサカイの爪を剥がしたり、指を切断する悟はウキウキしながらしてたけれど(そういう趣向か、私の情報を売ったせいで色々とあったからノッてたのか)