第30章 彼と共に彼を待つ
明らかに挙動不審さが増した所で左手の五枚の爪をミリミリ…と嫌な音を立てた後に連続的に落とさせて。その後、左手の人差し指を切り落とす負傷をヤタベへと写し込む。ブチ、ぼと…っ、という音と今までよりも悲痛な悲鳴が狭い部屋に響き渡った。
「あ、あ゙、…っぐぁ、あ゙あ゙~~~ッ!」
爪だけならば耐えられただろうけれど肉や骨となると我慢が出来なかったようで。
「い、言う!言うからコレ以上は…これ以上はっ……あ゙あ゙、ぁっ!」
首をがむしゃらに振り、震えながら項垂れる男。口元からつう……、と唾液が垂れてる。
割とあっさりと自供するみたいだなあ…と乙骨を見れば彼も少し笑った後に項垂れる男を厳しい視線で見下した。
「で?何ですか?早く言って下さい、これ以上待たせるようでしたら彼女が全ての指を切断後、体の末端から徐々に削いでいきますよ?」
「い、いま言うっ!イッポウから順に作った個数を言うからっ!だから痛いのは…っ!」
『はーい、じゃあ、その後にその材料の出所もねー』
焦る男はガタガタを拘束する椅子を僅かに動かしながらも喚いて。
今から情報を吐く、それも覚えきれない量を。でもメモを取らずとも伊地知が撮影してるから大丈夫だ。ヤタベはうつむきがちにイッポウ…、組木の箱で女子供を主に呪い殺す、一族を破滅へ追いやる呪物…"コトリバコ"の呪いの薄いものから順番に個数と、どういった人間に売ったかなどを覚えている限りに話していく。
……イッポウ、というのは中に一人分の呪いが詰め込まれた呪物。
ニホウは数がイッポウから増え、呪いも強くなっている。その一人分、という呪いの材料となったのは子供。この呪物は何も知らない子供や女達が夢中になる仕掛けが施された、最悪な呪われたモノ……。