第30章 彼と共に彼を待つ
289.R18G(拷問表現あり)
不安だけれど、それを相手に悟られないように。たった一回、悟が躊躇うことなくひょいひょいと爪を毟り指をもぎってたのくらいしかお手本を見てない。
どう尋問するのかなー、と内心不安になる中で伊地知より差し出されたメモを受け取った。彼は先程尋問の邪魔になるだろうとサトールを預けてあるので、それを小脇に抱えつつ数歩下がって携帯を横に持ってる。椅子に座る男……、ヤタベを動画で映している。後で見返したり出来るように、重要な証拠として残すために。
つっても私、普通に尋問とか拷問とかドラマとか漫画というコンテンツ内でしか見たことないんですけれど。それらが正解かなんて分からないのだし。
そっと乙骨の側に寄り、ヤタベに聞こえないように耳打ちをした。体を傾けて耳を寄せる乙骨。
『で、私完全初回なんですけど拷問にコツとかあります?爪を毟ってから質問の方が威圧感あるとか』
「……何も聞かずに拷問って…ハンジさんじゃないんだから…」
小さく乙骨が、はは…と笑った後に口に手を添えながら私に耳打ちを返してきた。
「普通に質問して、口を割らないようなら痛めてしまえば良いと思う。あまりにも素直なら嘘をついている場合があるんでその場合は脅してって……僕もそんなに得意じゃないですけど…」
『なる、ほ、ど……??』
「……(心を無くしたロボットかな…?)」
乙骨から離れて片手のメモを見ながらに順番に質問していくしかないのか、と厳重に拘束されたヤタベの側へゆっくりと歩み寄った。
『で、ヤタベさん、聞きたい事があるんですけど、誰にどのタイプのコトリバコを売ったかって情報を教えて欲しいんだよね』
尋問するのは、高専側が情報もなく無駄足を踏まないように、効率よく呪いを祓う為。また呪物の回収・破壊の為の質問。
私の呪骸のサトールは伊地知に預けており、片腕に抱えられながらもサトールは仕事熱心にこっちをじーっと見てる。
痛めつけない、こっちがただ質問してる事に対してヤタベが情報を簡単にゲロるのならば良いのだけれど、男はニタニタと笑みを浮かべてる。尋問するというのに焦る事なく私の質問には答えなかった。
「やだ。プライバシーの保護ってやつ?俺は口が堅いんでね、お客様の情報についてはなーんも答えられません!残念でした」
『ふーん…そっか!』