第30章 彼と共に彼を待つ
「ははっ!まっさか~?そんな失礼な事五条先生じゃないんだし僕、言わないよ~?」
『そこ、目ぇ見て言う事では~~?』
「いやいや、本当ですって~!」
いや~…いつもの結果、と書いてアンラックとかルビ振って言ってますよね!とツッコミたくとも今回の救世主に突っ込めない。
きゅっと口の中を噛んで『ソッスネ』と短く頷き、そのまま薄暗い通路の先へ視線を向けた。
『……尋問・拷問なんて相手に憎しみが無い限りはやりたくないんですけどねー……』
伊地知、乙骨、私。その三人で進む通路にはひたすらに通路を進むコツコツ、という靴の音だけが響いてる。
尋問をする、という話を聞いた時にどういう罪で捕まったかという話は聞いてる。確かに野放しにしちゃ危険だから呪詛師を確保して、呪物を誰に渡したとか、他に余罪は無いかとか、共犯者は居るのかと口を割らせるのは必要なのは知ってるんだけど。
「……」
乙骨もだけど、伊地知も黙って聞いてる。彼も責任を感じながらに逆らえない葛藤があるんだと思うけど……。
『リベルタだとか、ヒサカイだとか……カワグチ組だとか。
そういう、自分自身に直接的な関係を持って嫌な思いをさせられたならば、痛めつけてやる!とか最悪、ぶち殺してやるって思えるんですけど。
死刑執行人だとか、裁判官ってタイプじゃないでしょ、私みたいなのって…』
へへっ、と重苦しい中無理に笑ったら乙骨はへらへらと笑い、聞いていた伊地知も僅かに笑う。
「ああ、うん、ハルカさんってなんていうか短い痛みを与えるような格闘技、ていうか…北斗晶とかジャガー横田とかアジャコングみたいな女子レスラー的な、」
『……あ゙?』
「アッナンデモナイデス僕に構わず続けてください!」
乙骨が瞬時に怯え、再び歩く私達の間に間を開け、伊地知が視線を反らしその先で目を泳がせてる。君達が私の事どう見てるかちょっと分かりつつあるねー?
はあ、と白い息をひとつ吐いて。
『まあ……今から急に尋問だとか口を割らなきゃ拷問だとかってのは気は乗らないですね……』
……本日の私のやる気スイッチ、いずこ。