第30章 彼と共に彼を待つ
『傑さん、悟との関係って言ってあるの?言ってないとこんがらがった関係に思われません?』
彼女らの視線はまるで傑の連れてきた恋人を品定めしているかのようだった。その思い込みで悟の子を宿している、となると……。
「さあ?どうなんだろうね~?」
「アッこれはおクズな案件!もしやこの状況を楽しんでらっしゃる?」
にっこにこの傑は柱に設置してある店員呼び出しボタンを押してる。スルーで切り抜けようとしてるでしょ、この人!
この流れだと注文して話が切り替わっていくパターンだ。店員が来る前に蹴りを付けとく!てか誤解と解かなきゃ、とふたりを見た。
『傑さんが言ってなかったかもしれないけれど、私と悟は結婚してるんだよ。だから悟の子供が居るわけで…』
私から事実を言えばチッ、と小さな舌打ちがさっきにこやかな表情だった男の方から聴こえる。やっぱ楽しんでたんだな、夏油傑。
ふたりは、えっという表情をしてる。
「夏油さまの恋人で子供出来たのかと勘違いしちゃってたんだけど」
「えー…てか、あの五条悟?ハルカさん悪趣味じゃないッスか?
夏油さまとタメなのに三十路手前で未だ子供みたいで、ちゃらんぽらんの擬人化じゃん!」
菜々子がそう言った瞬間美々子が「しっ!」と菜々子の腕に突っ込んでた。いやあ、随分とはっきりと言うなあ…!
『ははは……』
笑うしかないネ!今頃悟、くしゃみしてんな。そのくしゃみ、風邪じゃないよ?こっちで悟の噂してるから出てるんだよ?
隣の傑を見た。彼を収める視界の奥には店員がこちらに向かって来てるのも見える。
『絶対私や彼女らを含めて反応を楽しんでましたよね?傑さん』
満面の笑みを向けて、少し首を傾げる傑。
「さあね?」
『うわ、絶対にそうだわ、この反応…!』
「お待たせしました!」と元気な声で注文を取りにきた店員。メニュー表を持ち、ふたりがきゃっきゃと指先で注文するメニューを指して注文してる。食べざかり、サイドメニューもしっかりと頼んでおりますねー……これは食べ放題の方が良かったかもしれない。
私達の注文分も伝えて去っていった店員。呪骸のサトールが「ヌイ」と鳴く。マジでなんの意味があるのか分からない鳴き声、何が言いたいんだろうね…。
「しかし、判明したのがまだ人の形もしてない状態って事はまだ性別が分からない状態なんだろう?お腹の子」