第30章 彼と共に彼を待つ
色んなメニューがある、それこそ肉だとかシーフードだとかチーズだとか。めんたいこは大丈夫だろうか…?うん、めんたいチーズって美味しいんだけど吐き気がある時にこのメニューに遭遇してねえかんな……まさに探り探りに、少しでもこの場に悲劇をもたらさない様に危険を回避しておく。
傑が見やすいようにしてくれたメニューを指先でぐるりと、危険ゾーンだけ丸を書いた。
『私はここら以外のメニューならどれでも……傑パッパはどれ食べたいだとかそういう希望無いんです?』
「君さあ、さり気なくそういう呼び方に変えていかないでくれる?」
『じゃあ傑ママ』
「あのねえ……君、そういう所だよ?」
グランドメニューは席に二部あり、一冊は鉄板を挟んだ前のふたりが見ているから、もう一冊は私と隣の傑で選んでる。もんじゃとお好み焼きどっちが良い?とか。具材はあらかた決めた、けどもんじゃもお好み焼きもどっちも捨てがたい。始めはお好み焼きにしよう!と傑と決め終わって、彼は目の前のふたりを向いて微笑んでいた。
「ミミ、ナナ。君達は食べたいもの決め終わったかな?」
「え、あ…」
「っと…、その、夏油さま。うちらの食べたいものが決まったのは良いんだけど、さ…?」
顔を見合わせて挙動不審なふたりは傑と私を見ている。汚れないようにと机の端に置いたサトールが小さくゴジョ、と鳴いた(鳴いた、で良いんだよね…?)
どうしたのやら、とじっと見てれば緩くふたりの片手がそれぞれ目の前の私達を指していた。
「夏油さま、もしかしてハルカさんって……」
すっ…、と菜々子の方が自身の腹を擦ってる。
「ああ、」と納得した傑は私の肩をぽん!と叩いた。
「そうなんだ、彼女、ハルカに子供が出来たって最近判明してね。ちょっと生臭いのが無理みたいで大変そうだよね、」
「「それって夏油さまの子ですっ!?」」
ガタッ、と半分立ち上がる目の前のふたりの迫力。私はぶんぶんと首を横に振った。
『いや、傑さんじゃなく悟の、だけど…』
「えっ」「なんで!?」
あ、これなーんか勘違いしてんね?と隣の傑を見るとにこにこした傑。
「そう、ハルカのお腹の子は悟の子なんだよ」
「夏油さまあ!?」
「五条悟の!?」
驚くふたりと落ち着いた態度の傑。傑を見てこれは素なのかわざとやってんのか…わっかんねえな…、と傑の方を向いた。