第5章 "好き"が止まらない!
ああ、なるほど。きっと私の先祖はこんな狂おしい程の感情に揺れてたんだ。好きな人というカテゴリは鎹は自身を認めてくれない父親に。私は愛してしまった人に。
どこかの書物だったか。愛とは呪いと謳ったものがあった。私は悟を呪いたくはない。祝いを呪いに変えたくない。せめて悟への気持ちを忘れないと…。
そんなもやもやした気持ちで、ふと夕食時にメッセージが携帯に届いていたな、と思い出した。手が離せなくて返してなかったんだった。明日に返すよりも気が付いた今返しちゃおう、そんなに時刻は遅くないし。
暗い部屋で明るい画面を覗き込む。
……。
その返信をする時にしばらく悩んだけれど、残った炎を消して心を埋めるならばと私は了承した。
『"その合コン、参加します"っと……、』
良い人、居ればきっとこの気持ちを上書きしてくれる。父は好きに生きろって言っていたからもう干渉されない。きっともう誰も邪魔もしない、監視もされない。兄貴も居ないし。
こういう合コンの場も初めてだけれどチャレンジするのみだ。
一度鼻をすすって、体勢を変えて。私は眠りに着いた。
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──朝、だ…
目を開けたら体が拘束されているような。私の目の前にはその人が居ないけれど、私の背後から抱きついて居るんだろうと察した。
はっとして、ほっとして……ちょっとドキっとして。温かくて良い匂いを感じてこの腕の拘束に守られているという安心感があって。
背に定期的に温かい風。
顔を押し付けて寝ているんだろうね、この人は。
『あのー…もしもーし…?私の背後にしがみついてる、ツカモト2号ならぬゴジョウ2号?』
「んーー…」
その呻くような間の抜けた返事でぎゅっと更にしがみつかれる。
更にドキッ、として正面に居ないことがありがたかった。
鎖骨辺りと胸下に回された腕を解こうとすると、すりすりと背に頭が擦り寄る。触れられて、求められている様で今更どきどきしてしまった。
『ばっ、馬鹿!私達、そういう関係じゃないってば!振ったじゃん私…!表面上もクソもへったくれもないんだよ?恋人じゃないのっ!今はなんともない関係っ!
まさか忘れてなんかないよね?悟、おい、悟!起・き・ろ!この28歳児!』