第30章 彼と共に彼を待つ
「……悟が伏黒恵を引き取って世話をしてきたように、私も双子の女の子達を引き取って世話をしているんだよ。別に私の血を引いてるわけじゃない」
『へー…あ、そういや前にそんな話を耳にしたような……、』
そういえばそんな事を言ってたっけか。本人からも悟からも。
傑はしっかりとしているし、こうも気が利いて優しい。ただでさえ給料の良い呪術師の特級である彼は強く、そして爽やかな見た目だし。モテるだろうにそういう男女の話を聞かない。昔は悟と共に帳の如くドロッドロな黒歴史を作ってたのは悟から聞いてたけどさ?
……家庭を持っていてもおかしくないだろうに。
やっぱ悟とつるんでたって事もあり、なんか……あるのかな?
じっと見ていたら傑はにこやかな表情に影を落とす。
「……何となくだけど君、今失礼な事考えてる?」
『まままままさか考えてないですヨー?』
ずい、と顔を近付け、より闇を貼り付けた笑顔を浮かべた傑が私の顔を覗き込んでる。「……本当なのかな?」と確認するように口に出しながら。
怯えてるのか、可愛い顔でメンチ切ってるのか。耳元のサトールが「ヌヌ…」と何か呟いてる。
傑に対しても、サトールの言葉(?)にしてもなんとも言えなくて苦笑いしていれば、途端に私の携帯が鳴った。
そのやかましく主張する携帯はどうやら通話。きっと悟でしょ。携帯の着信音に追い詰める気持ちも失せてきたのか傑は覗き込むのを止めたので、私はすぐに携帯を耳に当てた。
メッセージじゃなくって通話、画面を見れば相手はやはり悟から。
『……なに、悟?』
"さっきまた不審者通知来たんだけどオマエマジで大丈夫?トラブルメーカーだしねえ~…また変な事に巻き込まれてたりしない?"
『うーん、大丈夫です、巻き込まれてないですヨ?……とりあえず切るね…』