第30章 彼と共に彼を待つ
『誤報?私の周りにはとりあえず傑さんだけが居るけど……』
"あ、じゃあ傑の事だろ、不審者って。呪骸が傑を見て不審者と判断したんだねー、あっはっは!超ウケるー、確かに前髪が変な不審者だわっ"
通話が聴こえてるのか聴こえてないのか、それとも察したのか。ちょっとお怒りのオーラを纏った傑が笑っているのに威圧感を放ってる。これには私もペコ、と頭を下げ苦笑いが漏れた。いつも失礼マンが失礼しててすみません。
『こら、悟!失礼な事ばっか言ってんじゃないよ、私の目の前に傑さん居るんだからねっ!?』
"えー?でもぉ通報したのは僕じゃなくて呪骸だし~?僕の判断じゃないよねー?じゃあ悪いのは僕じゃなくってそこのぬいぐるみだァ~"
言い訳ばっかして…、とチッ、と舌打ちをした。
これはお灸を据えないと駄目か~?
『……定期検診に行く時、悟とは行かないゾ☆』
"ごめんなさいっ!"
凄まじい勢いで謝り、とりあえず通話を終わらせて……すみませんね、デリカシーの無い男との通話で時間を取ってしまって。マジで。立ち止まったままじゃ買い物への第一歩にもならん、と携帯をしまいながら部屋前から移動を開始した。
隣を歩く傑は小さく笑う。
「その呪骸は小さいながらもしっかりとしてるね……私を不審者扱いされるのには困るけれど」
『すいません、よく言い聞かせときます……
ダメでしょ、サトール!傑さんは買い物にわざわざ付き合ってくれてるんだからねっ!?あんまり言うこと聞かないと留守番か、君を作ってくれた学長に髪型をモヒカンにしてもらうよ?』
留守番かモヒカンかどっちに反応したのかは分からないけれど。マフラーに絡むように私とくっつくサトールはぷるぷる震えて「ヌッ、ヌゥ…」と悲しげな声をあげてた。多分大丈夫だ、呪骸の彼も分かってくれたはず。そんなしおらしくなった様子を歩きながら見て、傑はフフフ…、と楽しげに笑っていた。