第30章 彼と共に彼を待つ
何が言いたいのか分からないけどサトールなりになんか言ってる。
マフラーを自身の首に巻き、そこに絡めるように愛着が湧いてしまったサトールも忍ばせ、そこを自撮りして悟に送りつけた。マフラーに絡まるサトールはフリーダムな彼は嫌がるかと思ったんだけど、案外大人しくて助かる…。
すぐに携帯に通知が来て"チクショウ、見せつけてんのっ!?離れろや!"とキレ散らかす悟を確認した所で玄関にコンコン、とノックされる音。
本日は悟の部屋から侵入はしないようです。
『よし、悟に買い物行ってきます、と連絡入れて、と……』
「ゴジョ…」
耳元でたどたどしく囁くサトールをひと撫でしてベッドから立ち上がり、バッグを持って玄関へと急いいだ。急ぎで靴を履きドアを開ければ、暖かそうな私服の夏油傑が立っていて視線が合った瞬間、にこ、といつものように柔らかく笑ってた。
「悟から連絡が来てね。君の買い物に付き合うよ」
『すいません、急だったのに……来てくれてありがとうございます!』
「いや、遠慮しなくていいんだよ。呪術師界でもはや重要な人物だからね、ハルカは…しっかり悟の代わりに私が守らないと」
『……へへ、ありがとうございます…』
玄関を出てドアに向かってしっかりと施錠をして。傑を見上げると視線が私からサトールへ。苦笑いした彼は指差す。
「……これ、呪骸かな?随分と悟に似ているね」
『はい、悟から学長に頼んで貰った、呪骸のサトール、です!』
「ゴジョッ!」
なんかすっごいマフラーに巻かれたサトールが暴れるように震えてるんだけど?と思えば私の携帯が鳴ってる。メッセージじゃなくて通話の方。なんだろ?と手に取れば悟からの電話。
さっきのサトールにキスした事に直接物言いしたいのか?と不思議そうに見てる傑の前で携帯を耳に当てた。
『……もしもーし、なに?』
"僕ん所にめっちゃ不審者についての通知来たんだけどオマエ大丈夫!?拐われてる最中とかじゃない?"
『…えっ、不審者ぁ?』
周りにはそんな人物は居ない。現在地は寮の私の部屋の前の通路。私と傑と、私のマフラーに絡むサトールくらいしか見当たらないし。
なんだか良くわからん。誤報か?と傑を見上げると目を瞬き、苦笑いをしてる。