第30章 彼と共に彼を待つ
『あ、これ命令とか関係なく動くタイプなんですね』
「ああ、そうだ。サトールはモデルと同じく気分屋でな。じっとはしていられないんだ」
『「サトール…」』
硝子と声を被らせて、見合った後にサトールと呼ばれし手の中の呪骸を見る。
ぷるぷるとしながら手のひらの上で二本足で立ってる。じっと見上げてるサトール。やだ、ちょっと可愛さアップしてるかも…。
『あ、意外とこの子…可愛いかもしれない…』
「可愛い、か……?元はと言えばあのクズがモデルだぞ?」
そっと床に降ろしてみる。自立するって事は歩いたりするのかな?ふわふわと頭の中で悟をイメージしたぬいぐるみな呪骸が短い足でトコトコ歩く姿を想像しながらしゃがんで立ったままのサトールを見る。
『サトール、こっちだよー』
「言い忘れたが等身の問題上、歩行はあまり得意ではなくてな…、」
ああ、うん…頭でっかちだもんねー?
そう付け足してる学長をちら、と見てから(硝子も椅子に座りながらサトールを覗き込んでる)サトールに視線を移す。
トコ、トコ…と覚束ない足取りで歩く姿が可愛い。あらまあ…!と頬を綻ばせながらほっこりしてたのも束の間。
サトールはビターン、と床に突っ伏した後に頭を胴体と90度にぐにぃ…と大きく布地の体を曲げて前方を見上げ、短い手足でカサカサカサ…と動き出した。
『……ヒッ!』
ガタッ!
大きな音を立てて思わず飛び上がった後、医務室の部屋の隅で怒髪天のバリケードを作ってしまった私。
動きが"ファンシーなんてドブに捨てたぜ、ここからはクリークだ!"と言わんばかりのギャップの激しい動き。なんか虫かなんかを彷彿とさせるムーブなんスけど!やだー!
『こっわ!なんでラピュタの襲いかかるロボット兵みたいな歩き方してんですかっ!?』
製作者、どういうシステムぶち込んだの!?バリケードの中から学長へと叫んだ。
「いや、重心の都合上こうならざる負えなくてな……」
『だからって、だからって……っ!』
二足歩行がもたもたしてたのに四つん這いになった瞬間のカサカサは異常に速かった。ゆっくりならまだ分かる、急なカサカサが怖いねん。