第30章 彼と共に彼を待つ
『ありがとうございます。で、外出時にバッグとかに忍ばせておけば良いんですか?』
ウエストポーチには大きさ的には明らかに入らなそうな大きさ。いや、入れられたとしても携帯だとかハサミだとか小型ナイフだとか、持ち歩くためのモノを全部取り出してじゃないと無理そう。
それら必需品を入れたままで更にこの呪骸を収納しろっていうなら体だけか頭だけ突っ込むかの二択で、連れ歩くというのならもはや片腕に抱える状態では。
可愛らしい悟のぬいぐるみからこのファンシーの塊の厳つい製作者を見ると学長は私にそれを受け取れ、と言わんばかりに突き出す。慌てて下から両手を出すと今度こそ普通に鷲掴みしてた指が離れて手にぽと、と落ちた。硬いものではなく見た目と同じ様に柔らかい……、でもちょっとだけ重さがあるような。
顔を上げると学長は口を開いた。
「最小で多機能を持つとなるとこれが限度でな。改良のし甲斐はあるが戦闘力は小さい分、お察しの通りだ。なんとかしてこいつを持ち歩いてくれ」
『……これを持ち歩くのは幼女からJKまでが許されるやつじゃあ…?』
もしくはゲーセン周りだとか。
どっかの出張中の誰かさんにヤンキーヤンキー言われてるような私じゃ後ろ指指されるわ。
硝子は非戦闘員だろうから、きっと呪骸を手配されてるのでは。ちら、と硝子を見ると彼女は笑っていた。
「五条型の呪骸はどういう仕掛けを組み込んだんです?」
「十徳ナイフが仕込んであるが戦闘力にはただのぬいぐるみに毛が生えた程度と思ってくれていい。
危険時に悟に連絡が行くようになっている。あと、通話だな…内部に核とは別にスマートフォンを仕込んどいた。充電は尻から市販の充電プラグを差し込んでくれ」
『尻て』
まじかよ、スマホカバーという呪骸じゃんけ。
じゃあ、感覚的には小学生とかが付ける不審者用ブザーみたいなものなのかな、トミーとかツカモトシリーズみたいに動いてる訳でもないし。
もぞ、と呪骸が着ている服を弄ってみる。上下脱げる服、ズボンを下げると確かにぬいぐるみのケツの所にあからさまな差込口が着いていた。
ほー…、と構造を確認してるともぞもぞと手足を動かして嫌がる呪骸。少しばかり覚束ないスローリーな動き。