第29章 赤い糸で繋がっているもの
皆心配になるのか、"悟が小さな子を育成出来るのか?"って話で議論をし合う。仮にも教師だけれど想像がつかないらしい。私もいまいちピンとは思い浮かばないけれどさ。お腹に手を触れてキラキラした目で楽しみそうにしてたから、きっと実家に帰った時に見た、私の父や兄のように子供に対してデレデレしていたみたいに蕩けた表情だとか、赤ちゃん言葉だとか発しながら世話をするんじゃないのかな。
まだ、喜びとか共有する時間もあまり無い状態で海外に行ってしまった彼。忙しい身であるから仕方ないからその背を送ったけれども、ひとりの時間を持てて少し気が楽なのと、寂しいって気分は私の中ではバランス良くある。
悟は携帯もあるし、いつだってメッセージくらいは送り合えるから、少しだけ寂しさは埋まる。怪我なく、ちゃんと帰ってきて欲しいなあ……。
伏黒がサンドイッチを食べている時だった。
その伏黒の隣の虎杖が片手の持っていた弁当箱を机にカタ、と置いて携帯を手に取り、壁を見上げるようにじっと見てる。呪いが居るわけでもないしなんか考え事かな…。
私が仕切りについたケチャップをこそぎ落としながらオムライスを食べていると。
「四週目って逆算するサイトで調べたらさ。十二月末くらいの子?クリスマス辺りの…」
「ぶっ、」
『ゴ、ッフ………!ンの……っ虎杖イ!!』
伏黒が喉に詰まりかけたタイミングで私も変な所に入りかけた。なにを逆算してんだ…っ!その逆算した結果を口に出したから全員同じこと思ってるでしょ!クリスマスベイビーとかって!
片手を斜め前の虎杖に伸ばし、手首を掴む。
以前、トイレのドアに頭をゴン、とぶつけた時の痛みを食らうが良い。
『ハイ、"罰祟り"』
「いって!!何も"罰祟り"せんでも良くない!?俺、普通に四週間前っていつだっけ?って考えただけじゃん!失礼な事なんか言った!?」
『口に出すな、口に!ドアにぶつけた痛みの他、足の小指の痛みを付け加えとく!?』
「すっげえ痛いヤツ代表格じゃん!やだよ、んなモン!申し訳ございませっしたァ!」
移した痛みを虎杖から吸い取り直し引っ込ませて。私の隣の野薔薇がボソッ、と「製造日はクリスマスかよ」にキッ!と虎杖を睨む。言い出しっぺだかんな!
「ナンデ?今の釘崎じゃん!」
『まだ何もしてないって、そう構えんなし』
「"まだ"って何"まだ"って!やる気満々じゃんっ!」