第29章 赤い糸で繋がっているもの
「真希さん、ハルカは暫くは……というか今の状態では体術が出来ないんですよ」
「……ん?オマエ、この梅干しでも食ったみたいな顔してるコイツが体術に参加しない理由についてなんか知ってんのか、野薔薇?」
顔を押さえてた手が引っ込まれ、野薔薇を見ると視線が泳いでる。
私を見ながら「あー、えっと、」と言葉を詰まらせながら。野薔薇に打ち明けたと言っても文字じゃ全てを伝えきれないという事で詳しくは説明していないし、これ以上は言い逃れも出来ないもんだな……、と判断をして(長引けば強制連行もアリなルートになりそうだし)そろそろと手を上げた。
『あの、体術の授業に参加出来ない理由なんですけど……』
「なんだ、言ってみろ」
『そんな無惨様みたいな雰囲気止めて下さいよ……私今から処分されるんです?』
「誰がパワハラ上司だ。で?くだらん理由だったら強制参加だからな?」
ちら、とクラスメイトと二年全員が揃ってるこの状況を見て言うのなら今なんだろうな、と。遅かれ早かれ話す内容だろうし、隠しきれないし。信用出来る人達でもあるし。まだ数口手を付けたくらいでお腹すいたし。そのうち食べれなくなる時も来ると出産済みの姉さんも言ってたから食べられるうちに食べておかないと。
弁当袋を持ったままの手をそのまま机に置き、真希を見上げた。
『お腹にですね、悟の子が居るんですよ』
「は……?」
しん、と静まり返った中での狗巻の「鶏五目…」は何を指すのやら。初めて聞いたぞ、狗巻パイセンの鶏五目…。
「……それ、なんか証拠でもあんのか?ほら、あれ。あれだよあれ、手帳的なヤツとか、ほらあるだろ?」
信じらんないだろうな、と真希は証拠をせがむ。といってもまだ私は手帳を貰ってないし、写真はたった一枚だけあるのだけれど。
見せるものが今は無く、首を横に振った。
『母子手帳は心臓が動いてるか確認出来たら貰ってくる予定で。エコー写真が一枚あるんですけど、それ持って今、アイツが海外出張行ってます』
「今確認出来ねえのかよ……」
嘘を言ってるって疑惑を持たれているようではないけれど、少し残念そうな表情を見せていた。確認したかったのかな、という所でこのやり取りに入ってくる人が手を挙げた。
「俺、画像ですけど見せられますよ」