第29章 赤い糸で繋がっているもの
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いつか。そのうち…って後回しにしたツケの清算日がやってきた。隠し通せないと分かっていながらもついにこの日が来ちゃったか。
時間を多く取りやすいって事もあり、大体午後が体術に使われるのだけれど。その体術の授業はもう少し後、今は教室でランチタイム。机をくっつけての談笑を交えながらご飯を食べていた、その穏やかな食事シーンに違和感がねじ込まれる。それはこの教室にかつて一年ほど過ごしていたであろう、先輩ズ。
ガラ、とドアを全開にしながらに「失礼すんぞー」とやってきた彼&彼女達。ドアの一人分のスペースを潜って広がりずらっ、と四人が入り、それでも広い教室内。真希と狗巻がチンピラモード、乙骨は刀の入った肩掛けのベルトをぎゅっと握りしめて、特にノリノリなふたりを見て心配そうにしていた。
「なあ、おい、ハルカ~……今日こそは午後の鍛錬やっていくよなあ~?」
近付いては前傾姿勢で、超至近距離で凄む真希。
とんでもハプニングイベント発生しましたわ、コレ…!弁当箱をカタ、を机に置き真希から少し仰け反った。
『ヒッ!チンピラモード……!』
「誰がチンピラだ!」
ランチタイムにルンルンとしていた気分は一気にコンビニ前で屯してるチンピラに絡まれたおっちゃんの気分です。仰け反りながらに目を合わせんとこ。その視線の先には私の斜め前の席に座ってる虎杖……の後ろからこっちを覗き込むパンダ。虎杖も顔の横にパンダが顔を出してる事に噎せそうになって、パンダから仰け反ってる。これ、視界も逃げ場はねえんだわ!
……でもさ。そのうちはっきりしてしまうからいつかは言わないと。
こっそりとだけれど野薔薇にだけは今日、言った。LINE上で。『実は妊娠したので、最悪な事態を避ける為に体術は控えてる』と。腹を狙うな、とか周りに言えないしさ。
そしたら携帯画面をカッ!と目を見開いて見てた野薔薇が無言でこっちを見て、"あの変態教師ついに手を出したか"と。いや、常日頃から手というかなんというか色々出してたけれど配慮はあったよ?でも、完全同意での子供を作る行為にシフトしてたって事で。
話せば長いし、とてもLINE上じゃ文字で話し尽くせないから『後で』とそんなやりとりをしたくらいでの、午後に体術を控える昼食時のカチコミ。
……ちなみにカチコミに来たからって真希達が特攻服を着てるわけではないよ?