第29章 赤い糸で繋がっているもの
「常に呪術師と行動するのも大変だろうしな。人手不足もあるしプライベートまで共にするのも時間の縛りがきつい。呪骸を傍に置けば身を守るのはもちろん、危険時・破壊された際の通報、ハルカ自体への装飾具の付着でGPSも取り付ける事も可能だ、アップデート次第でだが……」
『え…それは便利……』
つまり、場合によってはひとりで行動も出来るって事。
そのプレゼンが魅力的で今すぐにもお願いしたい所を「だが、」と付け加える言葉。サングラスが蛍光灯で表面が光っている。
「それは一対一ならの話で、呪骸はリベルタのような集団を相手にした状況には向かない。むしろ捕まってから現在地を頼りにこちらから対処するようになる。非術師にはそもそも女性ひとりがふらついてるとしか見えないだろうしな、見かけだけでのマウントは出来ない」
「そっ、可能な限りは誰かと一緒に行動。リスクは出来るだけ避ける。そもそもあんたはひとりじゃないんだ、腹の子にも迷惑掛かんないように以前よりも行動を気をつけなよ」
『はぁい……』
この流れで硝子と栄養バランスちゃんと考えてる?してますよ、とやりとりをしてると、「え」という非常に間の抜けた声。
「……硝子。今、ハルカに腹の子……って言ったか?」
目をぱちくりした硝子が片手で私の腹を触ってくる。さすさす…と昼ごはんの収まってる胃の方が比率の大きいだろう腹を撫でた後。大して隠してるようでもない様子で。
「ええ、あいつやる事やってたみたいで。こんなんでも四週目ですねー」
『言い方』
やる事したから結果にコミットしたわけです。ブーチッブー、のBGMで有名なCMじゃないけど。
その報告を聞いた学長はおろおろとしてベッドから立ち上がりかけ、また座り、膝に肘をつきながら頭を押さえてる。わかりやすくうろたえておりますなあ……。