第4章 乱心、暴走
「うるせえっ!女房も子供ふたりも居なくなるから父ちゃん寂しいんだよっ…!悟くん、ごめんなぁ…、俺ぁ娘の事となったらなぁ……ぐすん」
……。
ひそひそと、悠仁と釘崎が本当に私の父親か、と話しているのが聞こえるぞ。
そうだ、前から聞きたかった事を思い出して、本人に確認をしてみよう、とサングラスを掛け直すふりで笑うのをどうにか隠す悟をしらーっと見てから父に確認した。
親指で悟を指して。
『前から聞きたかったんだけれど、今までセキュリティ高かったのになんであの人(悟)は普通に接してんの?』
近付く異性に虎の如く威嚇してた、父と兄。その父が最近出会った悟に威嚇しないのは変だなと思ってた。七海と共に家に寄った時は車といい状況が勘違いさせていたけれど。
「それはな、腕相撲をして俺が悟くんに負けたからだなあ…いい腕っぷしだ、それに家ん中の壊した床もちゃーんとけじめ付けて直してるからな、がははは!
口より手が早ェ所もあるお転婆娘だが、恋人どころか嫁にやっても良いぞ!」
かなり調子にノッている様だ。まだ恋人を解消したと言っていないせいもあるけれど、そのせいで余計な言葉を付け足してる。
ティーンズや悟の方向はちょっと今は見たくない。とんでもない発言をしてる父をまずは静かにさせなくちゃいけないから。
『チッ、うるせぇなぁ…黙っててもらうかぁ……っ、』
「がはは…は?」
豪快に笑う父の両肩に手を置き、がっしりと掴むと私は父親に頭突きをした。ゴッ、ととても良い音をさせて玄関前でピクピクと気を失う父に念の為回復を施してから、振り向く。誰かがヒュッ、と呼吸をした音。
伏黒はまあ、良いとして。釘崎と悠仁はちょっと引いていた。そしてさっきまで笑っていた悟は固まっている。
『腕相撲の件について後日ゆっくりと聞かせてもらいますんで?』
私は自身の髪を梳き、式髪を確認すると反転術式を使い、怒髪天の縄を使って父を玄関内へと運んだ。