第4章 乱心、暴走
タイマンでの賭けをした親子喧嘩をしていたら何か悟が理由でもつけて3人を連れてわざわざこっちまで来たんだろう。
「あそこで喧嘩をやってるぞ~一体何事かな?(棒)」と見物しにやってきたのだ。
父のボディブローを躱した所で、仲裁しようとした悠仁が私に気付く。私も状況に気付く。
負けるつもりじゃないけれど、絶対に負けられない戦いになってしまい、どうして親子で拳で語り合っているのかを右フックを打ち込みながら4人に説明をした。アッパーが決まり、ガチ、と父親の歯が鳴る。
そして蹴りと共に父親がゴロゴロと転がっていった訳で。
転がる父を自宅の玄関に連れていき、肩に触れて打撲痕等を"髪夜の祟り"で治療をした。
「……へっ、流石に俺やお前の兄貴が鍛えた事もあってイイ拳と蹴りだ、俺からは文句は言わねえ!俺たち家族からは干渉しねぇからよ、お前は好きに生きろよ……」
俺たち家族。それはきっと父親とここには居ない兄貴の事だ。今頃くしゃみでもしてるでしょ。
『……うん。ほら、治ったよ。あと悟はさっきからずーっとケラケラうるさいので回れ右して帰るか、黙って帰るかさっさと走ってお帰り下さいね、シッシッ!』
「それ帰る一択じゃないのぉ~?」
治し終えたのでペチン、と触れてた父親の肩を叩き、父は肩と首を回して調子を確認した。
そしてグラサンを外すといかつい顔付きには不釣り合いなつぶらな瞳を潤ませて、目頭を押さえた。
「たまにはっ…がえっでごいよおっ……!」
『……泣くなよ、男が泣く時は生まれた時と女房の死っつってなかった?』
あれ、女房じゃなくて親だった気もするけれど。
記憶の父親の発言と正解の食い違いに頭を傾げていれば、父の潤んだ瞳からはつぅ…と涙が零れていく。