第29章 赤い糸で繋がっているもの
これからの私の体に表れてくる変化。そのせいでまともに授業だって受けられるとも限らないのだし、三ヶ月程先で学年が切り替わる。ある意味では良いタイミングでの発覚だったのかも……。
「では、今日はここまでとします」
座学担当の補助監督生の授業が終わって、私達四人は昼食を取ろうと机をくっつける。
虎杖の弁当箱から手作りの肉団子をかっさらっていく野薔薇。等価交換としてカットトマトをひょい、と投げ込まれている、チベスナ顔な虎杖というそんなクラスメイト達の様子を見て、多少年が離れたクラスメイトでも私は二年、三年と一緒のクラスで居られないという事実をいち早く知っていたから、少しだけ残念に感じて。
……確かにさ、人数が少なくても強い繋がりがあるんだよ、悟が担任をするクラスは。それぞれの得意を組み合わせて良いチームワークを築ける。今のやり取りだって(虎杖には悪いけど)面白いし。
「トマトはねえって!白米イケないじゃん、釘崎!」
「なによ、もうアンタの手を着けちゃったもの。返却不可だけど?それとも何か?レディーの手を着けたものをくれという新手のサービスを要求していると?」
ドナドナされていく子牛のような瞳でゆっくりと首を振る虎杖。釘崎から少し離れた位置に無言で移動してる伏黒。面白い光景ではあるけれど、私はこの悩みの中で心からは笑えなかった。
『午後の体術、医務室に行ってくるよ。硝子さんに呼ばれててさ~・』
「了解、真希さん達にも伝えとくわ」
『ん、さんきゅ』
違和感なく通せるのは普段から事務室や医務室に呼ばれているってのもある。伝えておけばクラスメイト達は大丈夫だろ、と食後、運動着に着替えていく皆に、制服に上着を羽織った私は片手を挙げ、教室から出た。
今日の午後が丸々体術の鍛錬の時間になってるんだよね。医務室までの距離は教室から離れてるから厚着をして医務室に向かっていた。
『ゔー…さっむ』
うぉん、私は人間バイブレーションだ、くらいにカタカタ震えつつも少しでも温かい室内に行きたくて。小走りに医務室前に辿り着いて、こんこん、とノックをしてから中へと入った。
開けた瞬間からもわ…、と暖気を感じる。はよ温まりたいとねじ込むように体を室内へと入れば、硝子以外にももうひとり、意外な人物が居る。存在感が凄い、彼は椅子ではなく、診察用のベッドにどっかりと座っていた。