第29章 赤い糸で繋がっているもの
……電話のやりとりからすると二週間程出張に行くって話っぽい。
きっと強くて特級呪術師の赴く案件か、もしくは術式の相性とかで悟が選ばれたんだろう。じゃなきゃもっと良い人に連絡いってた、多分乙骨とか傑とか。その彼らが多忙で悟が暇そうに見えたんじゃないのかなあ……。いや、最近悟忙しそうではあったから違うか。
さっきから電話越しにやだやだと駄々をこねてる人。向こうも引き下がれないのは悟以外に行かせる人が居ないとかなんじゃない?伊地知から見えないだろうに悟は首を振って「やぁだ!やだー!」と子供みたいな拒絶の仕方をしてる。
これは埒が明かないなあ、伊地知の胃袋ドリラーしてる悟をなんとか任務に行かせないと問題は解決しないなって思って、少し声量を抑え電話中の悟に話しかけた。
『任務、より好みせずに行きなよ、二週間くらいいいじゃん』
こっちが声量下げたってのに隣の声量を下げない男。多分、壊れた昔のブラウン管テレビみたいに声帯のボリューム機能が壊れてるんだと思う。人前でも空気読まず大音量で話すし…。
マジ顔で通話モードのまま大音量で私に返事してきおったわ。
「二週間くらいって!やだ!任務より好みしますーぅ!
第一、二週間も離れてたらハルカに会えないって事だし、守れない。それにそれに、その間に赤ちゃん生まれちゃったらどうすんのっ!?生まれる瞬間立ち会い出来ないって事じゃん!」
『二週間くらいで出ねえよ!ハムスター以下だわ、私は昆虫か!?虫って言いたいんか!?』
あ゙あん!?とベッドの中で悟にしがみつきながら(部屋の外気が寒いけど悟はしがみついてるとあったかい)彼を凄めば悟はぷくっ、と頬をふくらませる。この反抗期め、私が言いたいのはやる事はちゃんとやらないと皆に迷惑掛かるって話っ!私だって二週間も離れられたらのびのびとするだとか鼓膜が楽だとかよりも寂しいって感情の方が上回るわっ!
電話越しに伊地知に突っ込まれたのか、頬をしぼませた悟は「ん?」と聞き返してる。