第4章 乱心、暴走
「……学校通うにゃあ、金とかどうすんだ?それにこないだの俺が腕無くなっちまう事があったような、危険な所じゃないのか?」
『勿論危険だよ、見た目も怖いしね。でも私は怪我を治すのが得意なんだよ。それから、お金の事は心配しないで。学費は免除されるし、なにかと掛かる時は出世払いで良いよっ!てさ。
たくさん勉強して、お婆ちゃんが私を京都の家に連れてこうとするなら返り討ち出来るくらいに強くなってやるもんね!なんなら今の私、父ちゃんとタイマンで喧嘩したら勝っちゃうかもよ?』
心配は掛けたくない。だから少し強気にいく。両手でファイティングポーズと取るとあっはっはっは!と豪快に笑う父は勢いよく立ち、膝裏に当たった椅子も勢いで倒れた。
顔はいかついけれど、私の父はとても嬉しそうだった。
「我が娘ながらはっきりと言うなぁ!よし、だったら家の外で俺と戦って勝ってみろ!勝ったら好きにしな、もうお前の邪魔は一切しねぇ、俺はお前を応援する。だがよ、俺に負けたら家に帰ってこい!」
父は目の前で自身の拳を突き合わせている。それを見て私は、片手の平に拳を当て、パン!と音を鳴らした。
私は同級生やその辺の人と喧嘩等はしたことが無い。けれども家族は別。父や兄に、女の子の私にもしもの事があればとしっかりと戦う術と…いや、それはかっこいい言い方だったか。はっきり言ってしまえば"暴力"を身に着けさせられた。その初めての相手が呪いだったって事で。
『ん、上等!怪我しても知らないからね?』
「そんときゃお前に治して貰うわっ!」
久しぶりの父とのタイマン。今じゃ悟にまた違う体術を仕込まれているから父に勝てるという自信はある。
……会話を挟みながら私達は家の外に出て、拳をぶつける事になったのだけれど。
はぁ…どうしてこうなってしまったのだろう…。
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「はい!勝者はハルカさんになります!」
ファイティングポーズを構える私と、地べたに転がる父親。
駆け寄る悠仁がその私の片手を取って高々と上げた。聞こえぬハズのゴングが聞こえる気がする。
近くでは悟が腹を抱えてアヒャヒャヒャ!と爆笑していた。何わろてんねん。