第29章 赤い糸で繋がっているもの
279.裏
鍋を一緒に食べた後はそのまま買い出しをしよう、という事で店を出た後はそのままスーパーに向かい食料品等を買って、悟と一緒に寮へと戻った。
外は寒かったし、部屋に帰った後は手洗いうがいを終わらせ、買ったものをしまった後にすぐにお風呂に入れるようにバスタブも洗って。
バスタブにお湯が溜まるのを待ちながらベッドに腹ばいで寝そべる悟は、私が渡したエコー写真を持ってずーっと見ている。横顔はにこにことして嬉しそうで、また人の形をしてないモノクロの楕円から視線を反らさない。その側で私はベッドに腰掛けてブランケットを膝に掛けていた。背後で寝そべってる悟のバタ足の服の擦れる音がずっと聞こえてる。
……子供がやるそれで、悟が父親っていうよりも兄弟…、弟を楽しみにしてるみたいな感じだなあ。
「はあ~…どんな子が生まれるんだろうなあ……!男の子かなー、それとも女の子かな~?生まれてくる子の名前もちゃんと考えたいよね~……ふざけて五条勝って着けたら分身フェイントとか術式を使いだしちゃうもん、視力も悪くして眼鏡を掛けるようになっちゃうし~?
あっ!互いに家族に連絡しないとじゃん!赤ちゃん出来ましたーって!あーでもこれ安定期入らないと報告ってせっかちさんなんだっけ?報告早漏?僕早漏じゃないのに報告早漏で候、なんちって!
あー、やば、ウケる。幸せ過ぎて死にそう、五条悟の死因、嬉死。なーんて葬式で困惑されちゃうねっ!お供え物は喜久福のずんだクリームでよろー」
『勝手に喜んで死んで私を未亡人にすな』
随分と捻くれた未来予想図を展開してた悟。彼が私へと振り向けばにぱー、と笑顔を見せた彼が腹這い状態から起き上がり、私の横に座る。そして片手を腹部に当てた。
「はあー、ふふふっ……僕たちの子。ここに、小さな命が宿ってるんだね?」
不思議そうに、そして嬉しそうに彼がすりすりと撫でてる。ぴったりと寄り添う体、間近の顔は白い睫毛が伏せて腹部へと視線が向いている。
撫でているっていってもそこは全くもって膨らんでない、むしろ夕食の鍋をしこたま食べて子宮よりも少し上にある胃の方が膨らんでいるのでは?と思うくらいに下腹部に変化は見られない。
そりゃあそうだ、一般的にはまだ気が付きにくい時期。事件からの不安での検査でようやく見つけた結果だったんだから。