第29章 赤い糸で繋がっているもの
「ハネムーンってね、ハニームーンって言葉が崩れてそう呼ぶようになったんだって。なんでハニーがつくか知ってる~?」
どうせダーリンとかハニーっていちゃつくからだろ、と分かりやすい言葉に私はふすん、と鼻で笑った。
『ダーリンとかハニーとかそういうカップルがいちゃつくからでしょ?』
「ブー!不正解!ざーんねんっ、はずれですーピロピロピロー!」
『チッ、なにそれ、小学生てか幼児かよ。悟に搭載されてるその人の怒り買う煽りシステム、アンインストール出来ないわけ?』
人の神経を逆なでするのがとてもお上手なようで。どうどう、と軽く宥められた後に軽く咳払いをして空気を元に戻した悟。
「ハニー…蜂蜜ってさ?栄養たっぷり、強壮作用があるのね。それでいて体に非常に吸収されやすいんだって」
『へー』
幼い頃の兄の持ってた、ボタンを押すと「へえ」と声の出る玩具を押す真似をしておく。机をたん、と指先で叩きつつ、へーって。
悟は「懐かしいな、それ」とツッコんでから続きを話していった。
「で、昔の新婚さんの夫はね、蜂蜜酒を飲んでひと月の間ばっこんばっこんひたすらに子作りキメてたらしいよー?だからハニームーンなんだってー」
『へー、蜂蜜酒抜きでの通常時の悟じゃん』
ハネムーンとか抜きでずっとしてるから語源を話されたところで、それがなにか?だわ。それに作る工程はもう作られてるんだから追加発注なんて今更だろうし、暫く要らないのでは。
不服な表情のGLG。どうどうどう。こちらから宥め返しておいてっと。
『……でも、きっと結婚式とか普段しないような事で私も悟も疲れてるだろうしゆっくりと休めたら良いよね。悟だってそういうイベントの前に普段から忙しいんだし、その旅行中に羽を伸ばせたらって思うよ?』
「ふふっ……オマエは優しいねえ。旅行中、いつもよりもマシマシでくっついちゃおうかな~?」
そう言って柔らかく微笑む悟は「ハルカと一緒なら最高の思い出にしたいな」と笑っていた。