第29章 赤い糸で繋がっているもの
顔が熱いのは照れてるのもある。確かにあったまってぽかぽかしながらも、スープが僅かに残った器を持ち上げた。周囲の視線はかなり減ったけれどさっきから目立つことしてるから時々見られてんだよね、誰かさんのせいで!
たっぷりと食材のだしが溶け込んだスープを飲みながら、照れて熱くはなれたとしても彼には酔えんわ、という呆れ気味な言葉を出さず、鍋の具材をふたりでちまちまと消費していく。
文句が言いたそうな表情をしつつ、悟も取皿に具材を入れてスープをおたまで掬ってよそってる。
カタ、とおたまを置いたところで「あ、そうだ」となにか思い出した模様。ご機嫌なスカイブルーがサングラスから覗き込んでいた。
「お腹、目立つ前には式挙げないとね。やっぱ六月のジューンブライドって言いたいけれどきっとその頃じゃあお腹目立ち始めるだろうし……四月くらいとかどうかな?」
一年生を終わらせて桜の季節かあ……。それ、良いんじゃないのかな。今は一月も後半、急すぎず遠すぎず。
でも、不安なのが禪院家問題じゃん?と自分のキャベツだらけの上にホルモンが鎮座してる取皿から悟を見る。彼は「ん?」と目が合うなり笑ってた。
「……どう?」
『良いと思うんだけど禪院家の方は?大丈夫なワケ?』
「ンなモン、跡継ぎ作ってんだから僕たちをもう引き剥がせないでしょ。見せつけにこうやって跡取り作りました~ってケーキ入刀ならぬちんこ挿にゅ、」
『オイッ!ゴリラの挙式みたいな事すんなっ!』
私はヤケクソになった近藤さんの結婚式を目指してんじゃねえんだけど?と彼を見れば悟はニヤニヤとしてた。今日も小学生並みに特定の下ネタで喜んどるわ……。
「じゃ、そういう方向で話は進めていこうね。
御三家を中心とした式では白無垢で。場所変えてそういう堅苦しいヤツら抜きの式ではドレスでって前に言ってたと思うんだけど……ソレ、覚えてる?」
『うん、覚えてるよ』
家柄としては堅苦しく、人柄としては好きなようにと。
もぐもぐと口を動かし終えた悟は箸を置き、親指で口元を拭っていた。
「呪術師ってのは忙しいモンだからね。その後の流れでそのままハネムーンに行こうと思ってるんだけど……」
机の空いたスペースに置かれた悟の携帯。そのまま指先で画面を何度かスクロールをしている。視線を画面から私に上げて「ねえ、」と言って。