第29章 赤い糸で繋がっているもの
(ちょっぴり目元が赤く、瞳が潤む)悟が外したサングラスを持ち、弦(モダン)を荒れ知らずな唇に軽く咥える。
……ああ、こういうの、雑誌の表紙とかモデルがやるポースかも。うんうん、格好良いかもねー。
そのままにふっ…、と少し斜めの角度で微笑んだ悟。ポーズのフィニッシュらしい。写真撮れって事か、SNSに上げる時用のさ?
「ほぅら、イケメンの僕に酔いな?泥酔しちゃってもいいんだよ?どろどろに溶けて腰砕けても、ね……?」
『アッふーん、わー酔っちゃった頭がフットーしそうだよー……あ、タルタルソースうまー、そろそろ雑炊に行こうかなー、ご飯投入してもいい?』
始めの頃だったら顔や耳に熱を感じながら胸を抑え、やだ…かっこいい……!なーんて悶えてたかもしれないけれど、ずっと悟と一緒に居れば顔がイイって事に慣れてしまったわけで…
(たまにスーツだとかそういういつもと違う彼にやられるけれど)
キャベツ、キャベツ……と鍋で煮込まれたキャベツを取皿に取っていると視界の端で主張する白髪の頭部。ひょこひょこと私の視界に入ろうと、かまってアピールをしてる悟。やめろ、ひとりチューチュートレインすな。ちょっとイライラしてくるわ。
仕方なく目の前の鍋よりも更に奥に居る悟へと視線をイヤイヤ向けたらサングラスを掛け直して眉を寄せてる。
「最近僕への対応あっさりしすぎじゃなーい?もっとこってり対応にしてくんないと悟君、満足出来ないんだけどー」
『(こってり対応?)……気の所為じゃない?気にしすぎだよ、悟』
割とあっさり気味にあしらってます、自覚してますけどなにか?と首を傾げつつ。気の所為ダヨ?
「えー?ホントぉ?僕の事好き?この天才最強でスパダリイケメン教師こと五条悟の事、愛してんの~?愛してるって言ってみ?音声データからちゃんと愛してくれてるか判断するからサ!」
面倒くさいムーブ始まってんなー、どういう判断機能を付けてんだろ、この人。
ちら、と見上げながらも楽しげな表情の悟を見て一言。
『……愛してるよ』
「知ってるーー!僕もハルカの事、愛してるよっ!だいしゅき!」
店内に響く、シラフの大声に視線が集まった。
これ以上野放しにしたらもっと大きな声で愛を囁かれる。全身の血液が沸騰するわ、鍋みたいにさっ!
『シー!……声がでかい、気持ちは嬉しいけど声量下げてくれません?』