第29章 赤い糸で繋がっているもの
おたまでスープを掬って、おたまを食器立てに戻して。程よい塩味と野菜や肉類のうまみの染み出したスープがめっちゃ美味しい。これ、シメの雑炊分スープ…残るかなあ~……。
優しい表情の悟の顔がどんどん悲しみの表情へと変わっていく。おい、ドゥシタ?情緒不安定……?大丈夫?
「ハルカが…っ、食べることでしっかりとっ…赤ヂャンガッ!受け止めデーーヒィッフウ!!ア゙ーハーア゙ァッハアァーー!」
『突然の議員化ワロタ……(いや笑えねえけど…)』
にこにことして朗らか~に話してたかと思ったら割り箸をカランッ!と器の上に置き、急に泣き始めた悟。ここは号泣会見会場かな…?
サングラスを机に置き、片手で顔を抑えながら泣いてる…。ジェスチャーマシマシで気合入れてふざけてるなあ、なんて思ったんだけど隠した手の下、頬を伝うきらりとしたモノ。
……えっ。このノリでマジで泣いてんの?この人ぉ…。
「すっご……ウレジイ…っんだけど!僕、ハルカとの赤ちゃんすっごく欲しかったの…おっ!ンハーハンッ!」
『嬉しいのは分かったけどガチ号泣でののむるの止めろ~?』
……店内の他のお客さんも指差してヒソヒソなんか笑ってるし。ただでさえ悟は背も大きく、整った顔、白髪の彼と白髪を多く持つ私のコンビは目立つしさあ……。
引く私と対照に悟の野々村ってるボルテージが最高潮に達してる。そりゃあ声量も上げられてるってモンで。
「少子化問題高齢者ンハハーン、モンダァイ!どげんかせんといかんって!一生懸命っ!僕はネ゙ェ……ッ!嫁の腹にィッ!タネツケェ…ッ!プレス、したんですわっ」
『……わざとやってるな?よーし、表出ろー?グロリアスドライバーをご馳走してやっかんな??』
鍋に向けていた箸先で彼を指し、窓の外へと向ける。悟は首を横に振っていた。「ヤメデェッ!ハーハン!」って。どこまでふざけ通すねん。嫌なら始めからふざけるんじゃない。
チキン南蛮を追加注文して口に運ぶ。タルタルソースの掛かったチキン南蛮。衣はサクサクで中は肉汁が出てて。
『は~…美味しいのに、流し込むのは燃料じゃないのがなー…もう少し、妊娠発覚前に来れば飲めたんだけど』
「お酒は駄目~、そんなに酔いたいならさ、ハルカ。僕の顔を見て?」
『……ん、何?福笑い的な?』
「GLGの僕の顔パーツはそんなゴチャゴチャしてねえよ~??」