第29章 赤い糸で繋がっているもの
彼は「ここはお寿司と言いたい所だけれど……」と呟く悟。寿司もイイよね…!あのデートの時の銀座のお寿司を思い出すんだけど。あれ、すっごい美味しかったんだ~……何度でも行きたいなっ!
でも悟の口調からして頭に浮かんでもその寿司に行くって選択を入れてないみたいで。そりゃああったかいものを食べるって言ってもお寿司で温まらないよねえ、茶碗蒸しとか味噌汁なら温まるけどさ?
手を繋いでいない、反対側の手で人差し指を立てて見せ、歩きながら強気な笑みを見せる悟。
「ここはやっぱり鍋っしょ!ねえ、モツ鍋とかどう?九州の鶏塩水炊きホルモン鍋とか!オマエ、そういうの好きそうだし~?」
お見通しだって顔してんなあ。ウインクなんてしちゃってさ!
『いいーっ!食べるーっ!』
「そお?じゃあ決定!あっ、もちろんお酒は駄目ね、」
『アッウン…知ってるー……』
前後にぶらぶらと振り子のように振った繋いだ手。僅かな風に触れて冷たいから私のポケットに悟の手ごとしまい込む。少し前に買った変わり種な塩の瓶を存在を手の甲に感じつつも、外気に触れるよりはポッケの方が温かい。
「看板見えてきたよ」
彼の言う通り見えてきた看板。そのまま私達は並んで向かって、良い匂いを漂わせる店舗へと入っていった。
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鍋を前にし、店内の暖房もあって凄く温まる。何よりもぷるぷるとしたモツが美味しい。たくさんの野菜も取れるし、ごはんがイケる。
店舗内は流石にガスを使ってる事も、食事するから代謝もあって室内が暑いくらいに感じ、冷たい烏龍茶で時に涼みつつ鍋を突いてた。本当ならお酒を頼みたかったけれど(居酒屋だしさあ、九州料理がいっぱいあるんだ、名物のお酒も色々あるしっ!)飲めないのであって。でも鍋、寒くなくてもコレは美味しいって思う!
ふと、視線に気が付けば手が止まってる悟。
『……ん?手が止まってますけど?どったの、食べないの?』
にこ、と悟は笑ってる。食べてるのは食べてるけれども。あまり食欲無いのかなあ、そう心配する中で彼はふんわりと優しく笑う。
「んー、もちろん食べてるよ?でも、オマエが今食べてるのってオマエだけじゃなくってさ。赤ちゃんの栄養にもなってるんだって思ったた感慨深いよね。おかわりとか食べたいものがあったらいっぱい食べてね?」
『ん、もちろんたくさん食べさせて頂きます、超美味しいです』