第29章 赤い糸で繋がっているもの
目の前の彼は空いた手で勢いよくパン!と口元を抑えながら、スーパーヒトシ君の如くしゃがみ込んでいく悟。超時間差攻撃を食らったみたいになってる……私はDIOだったのかな…。
声にならない声を漏らしてるしゃがんだ彼はひとしきりなにか呻いて。急激に立ち上がって(忙しいなや、オイ…)
…泣きそうで困惑して、それでいて幸せを噛みしめるような……そんな複雑な顔をしながら、悟は両手を広げ私を正面からぎゅううっ、ときつく抱きしめる。
「……~~っ、う、…ぐ、コレ、嘘じゃないんだよね?……これ、は、現実なんだ……っ、赤ちゃんデキた、て………!
うれじいっ!ぐずっ、ボグ、嬉しいよ、ハルカ~っ!」
『道のど真ん中で何泣いてんのさ……、』
嗚咽混じりの言葉、泣いてびくびくとする彼の背中を撫でると忙しなく私の背も撫でられる。悟を撫でたのに私が倍くらいに撫でられ返されてる。
「ねえ、聞いても、良いかな…っ?」
『…ん?』
「僕と、ハルカの子、産んでくれる……?」
そんなの、産むつもりで悟の事を毎晩受け入れてたんだから、今更断るわけがないでしょうに。
授かった命、しっかり守って元気に産む。悟の背を引き寄せるように抱きしめた。
『……うん、もちろん。言われなくてもこの子を産むよ?』
「……ふふっ、うん…そう言って貰えて嬉しいよ、ありがとう!オマエの事、いやハルカとお腹の赤ちゃんの事、今度こそ、絶対に僕が守るから……っ!」
『ありがと。悟の事、頼りにしてる』
彼がきちんと泣き止むまで、人目があろうとも道の真ん中で私達はぎゅっと抱きしめあった。
やがて嗚咽も消え、しゃっくりも止まった悟。彼の腕から開放されるとサングラスの内側に雫の着いた、頬が濡れてる悟が照れくさそうにくしゃりと笑う。片手にしっかりと持つ写真を見て今度は少しばかりだらしなく笑っていて。
この時点で分かるよ、悟は親ばかになる。間違いなく子供に対して鼻の下伸ばして○○ちゃ~ん!……って、実家の兄や父親みたいに、悟も子供にデレデレになるって!
写真を見て嬉しそうな悟を見て笑みが溢れる。嬉しい、私もそんな未来の為に元気な子を産まなくちゃ、だね…?
……私も守って貰ってばかりじゃだめだ、きちんとこの子を守らないと。もう勝手な行動をしちゃいけないのだとまだぺたんこなお腹を擦って決意をした。