第29章 赤い糸で繋がっているもの
『あのね、私最近になってすっごく不安だった事があってね、それで硝子さんに今日買い物行きません?って誘いつつ相談に付き合って貰ったの』
「……うん、それでそれで?」
私を抱きしめながらちょっとリズム取りつつ、あやすように搖する悟。ちゃんと静かに聞いてくれている。そのままに私は話続けていった。
彼がからかったのだから私も彼をちょっとだけからかおうって遠回しにも今日の事を報告していく。
『生理が、最近来なくてさ。で、あの攫われて酷い目に遭った事もあって、直接じゃなくても間接的な接触もあったから、不安な中で検査薬を使って、検査薬に反応があって。
私、それを信じたくなくって……診断ミスなんだろって。もしも…最悪の結果だったら私、悟に嫌われるんじゃないかって思っちゃって…』
「……嫌いになんてならないさ」
『うん、きっと悟ならそう言うだろって硝子さんも言ってくれてたよ。私も悟にはそうであって欲しいって思いながら。
それでも自分で調べた結果が誤診だとか、ストレスとかで遅れてるんだって願いながら今日お医者さんに見てもらってさ…?』
その話をしっかり聞き逃さないという意志を感じる。彼が私を揺する動きが止まった。その沈黙のままに私は続けていく。
今はこの背後の熱を、優しさが頼もしい。
例え最悪の結果であっても、悟には勇気を貰えたと思う。雪が降っていても私にちっとも当たらなくて、彼が無限で雪を拒絶してるという事。
私を影から見守り、現在は雪から冷えないようにしっかり私を守ってくれている。
自由で危険だらけと感じてたさっきとは違い、束縛がありながらも確実な安心を得てる……。
『──結果ね、私、妊娠してたんだって』
「……」
息を呑む悟。
『始めこそ絶望したよ?だって、悟とはたくさんえっちして、赤ちゃんをさ、ものすごーく望んでたっていうのになんであいつらのなんだって。私だってヤクザの子を望んじゃいないし。誰も望んでない結果じゃんって……』
少し戸惑った視線を見た。その視線の奥に悲しみが見えた気がした。
……こういうのからかうのはあまり良くないなって、すぐにネタバラシにいく……これで悟とはおあいこ。
『硝子さんもお医者さんにさ、ガンガン突っ込んでくの。誤診だろ、病気ではって。そしたらさ、私を見てくれた担当医がね、こう言い切ったんだよ。四週目です、だって』
「………」