第29章 赤い糸で繋がっているもの
それは病でも、一週間程度の分かりにくいものでもない丸い影を映してた。婦人科の医師がこれか、これなのかな?とぶつくさ言いながら見つけた円形も影。ああ、立派な胎嚢が見える、これはカワグチ組で犯された時、最短で受精・着床したといっても一週間の大きさじゃないな……確実にそれよりも前に受精し、ハルカの中に宿った命だ。
そして私よりも多くの新しい命を見てきた専門家は言う。約四週目の命であると。
──結論から言うと。反社会的組織内での暴行より前からハルカは妊娠していた、という事実がここで判明した。つまりはあの五条悟の子孫が口をあけて魂が抜けたみたいな顔してる子の腹に宿されている、という事だ。
私もハルカも違う意味で動揺というか、鳩に豆鉄砲というか。唖然とする。追い打ちをかけるように医者は言った、イブに行為をして出来た子だろうとのこと。
ったく、相当前の行為の話じゃねーか!
思わず私は怒りと祝福を込めて、彼女の背を強めに叩いてしまった。
****
申し訳無さそうな顔をしたハルカに食事を奢って貰い、ゆっくりと店内で休んだ後はこの流れで買い物へ。私がこの辺りに来た時に良く通ってた、店に向かって進んでいく。
場所も場所だし人通りの少ない場所だけど今はハルカひとりじゃなくて私が居る。戦闘員ってわけじゃなくても側に居るからもしもに対応は出来る。
まあ、周囲に注意をするのを怠らないようにするよ?非戦闘員なりに警戒心はあるからね。警戒をしながらにハルカと進んでいけば通りの大きな建物からふと見覚えのある姿を見た。
「あ……」
五条だ。なんで五条がこんな所に居るんだ?仕事が入ってるとハルカから聞いていたハズ…。
進めていた足が止まってしまった。そんな私の脇からひょっこりと顔を出すハルカ。にこ、と笑ったのが横顔で見えたけど、その笑顔だった表情から喜びはゆっくりと失われていく。
『……なん、で…』
「あー…見た、アレ……」
『……そりゃあ、ああも見せつけてたら…、』
短く頷く彼女から明らかに元気はなくなっていく。高専からタクシーで移動してる時と同じくらいに落ち込んだハルカ、そりゃあそうだ。私と共に見てしまった光景は落胆させるものだったから。