第29章 赤い糸で繋がっているもの
ハルカの説明の中にその理由を知った。
まさかそんな事もあったとは知らなかった。身体を穢されたとは聞いていた、けれどもそのような乱暴をされたとは事細かくは聞いていない。同性とはいえ、そこまで踏み込むのは行けないのだと気を遣っていた……暴力と強姦、きっと、相当辛かっただろうに。
その乱暴された内容で、五条以外の精液が体内に、膣内にいくらか入った可能性があるのだと勇気を絞って言うハルカ。「それくらいは大丈夫だ」なんて気休めを言えない、なぜならそういう事でも妊娠する可能性があったから。事例だってあるんだ。いくら人間の中で最小の細胞だと油断しても、それが命を紡ぐ種なのは変わらないんだから……。
また、彼女は自他共に認めるくらいのトラブルメーカーだった。ならばその不意の事故がきっかけの妊娠の可能性を私は否定出来なかった。
……一言も言っていない弱音。ハルカの心の声が聞こえてきそうだ、どうしよう、と。
検査薬の反応が確実に正確とは言い切れなかった。
僅かに外れてる可能性だってある。彼女もその可能性に賭けていた、ただ生理が遅れてるからだと。検査薬が間違いであると。
だから約束をして私達女ふたり、五条に内緒で産婦人科で調べて貰うことにした。私よりもそっちの方が専門的なはずだし。そもそもうちに器具なんてないし。
──結果、彼女は妊娠していた。
明らかにハルカは"終わった……"という表情をしていた。そうか、この子はすぐに不幸へと足を突っ込む子。だからといって確実なのかという疑問。結果を見せられないと私は納得が出来ない。私もその医者の結果を聞いて可能性に賭けたくて聞いた。
……例え、ハルカに宿った子が五条の血を継がなくてもアイツは多少はヘコんで悲しみつつも、ハルカの血を受けているからときちんと育てるのは知ってる。
他の可能性はどうなんだ?例えば生理が遅れているのはなにかの病気のせいなのではと。子宮内に出来た腫瘍なのでは?と私から担当医に聞いた。そこで更に経膣超音波診断での検査をしてもらったワケだ。