第29章 赤い糸で繋がっているもの
非術師時代から体をよく壊してた私が心配しても(呪術師になってからの方がよくぶっ倒れてるし、なんなら死んでるし)説得力とかないけれどさ?
心配する私を見て硝子は短く笑った。
「アイツに限って体調崩すとかナイナイ。むしろストレスとか周りに撒き散らしてるからアイツ自体にはストレスなんてないだろうし、風邪とか引いたとして前にゴタゴタあったからなあ~……すぐにハルカに治して貰うだろ?変に具合悪いのは隠したりはしないでしょ」
具合悪くなったとしてもすぐに治さず甘えて看病してーとかは言いそうだな……。と残ったミルクティーを飲み干してソーサーにカップをカチャン、と戻す。
硝子もコーヒーを飲み干したみたいでカップの底が見える。そろそろ食事タイムを終えて悟に言ってきた通り本当に買い物をして帰ろう。ちょっと早めに帰って、悟を待って、ありがちないいニュースと悪いニュースがある、みたいな事をして彼を驚かしてやるんだ。そう思ったら子供っぽい悪戯みたいで変にわくわくしてきた。
「……よし、食べた事だし店を出るか。会計、頼んだよー」
『了解ッス!むしろ安いと言いますか、デザートとか頼まなくて大丈夫です?』
「居酒屋が今の時間やってたら色々摘んでたけどさー、私は甘いのは結構!」
財布を取り出しつつ、伝票を手に取りながら席を立つ硝子を待つ。
その硝子の言葉で気が付いた。しばらく酒飲めねえやんけ……。
『……あー…、するってーと私はしばらくはノンアルって事になるのかあ…』
「ん、そういう事だね、まあ、雰囲気くらいは楽しみな。七海や先輩と行く時は絶対呼ぶからさ、ハルカはノンアルでも飲んでりゃ良いだろ」
『雰囲気……。ノンアルでも酒により近い味のものでも探してようかなー…』
支払いを済ませて、悟からのお下がりのグレーのマフラーを巻き直した。まだまだ寒くなる冬の真っ只中。店内が暖房効いてたからくつろいで室温に慣れてしまった分、外が余計に寒くて。
服を買いに、と指差す方向へと硝子が先導する。普段来ない場所だし知ってる店舗なら着いてくのが良いよね。気分がぽかぽかするような、そんな上機嫌で硝子と一緒に買物へと繰り出した。