第29章 赤い糸で繋がっているもの
デザートまで食べ終えて、ふたりとも目の前にあった食器がスタッフにより片付けられていく。まだ残ってる硝子のコーヒー入りのカップと水の入ったグラスだけが残されて。私が食後に飲まなきゃ、と持ち運びの小さなケースから幾つかの錠剤を取り出していると、硝子がそれをじっと見ていた。
「これからは葉酸も摂っときなよ?」
『あ、これそうです』
「えっ?……やけに準備が良いな、いつから摂り始めてたの?」
これ、飲むようになったのいつからだったかな、とうろ覚えながらも記憶を探る。
確か、"罰祟り"をして極度の貧血で死にかけた時以降だったかな?あの時は鉄分のサプリだけだったけど、それから間もない時から体には必要だと飲むサプリメントに葉酸も付け加えられたんだっけか。
思い出したその事を説明すると、硝子は鼻で笑って残っていたコーヒーに口をつける。
「あいつ準備万端過ぎて怖っ……重すぎない?あの五条がそんなになるほど夢中になってるなんてね……手癖の悪い男だと思ってたんだけどな~…」
確かにそれは私も思うんだよねえ…、と食器を片付ける際に頼んでいたミルクティー。スタッフにより運ばれてきてカップにさっそく触れ、暖かいミルクティーの入ったカップを口に付ける。唇からあったかい。ただでさえ寒いの苦手なんだから、これからはいつも以上に冷えには気をつけなきゃ……。
カップをソーサーへ降ろしてカップの中身から目の前の硝子を見上げた。
『あんな見た目ですもん、始めの頃女の子にキャーキャー言われて満更でもない顔してたし、常に女の子には困ってないだろうなって思ってたんですけど……』
それをばっさり切って私だけに集中するなんて。
……隠れて付き合ってる子とか居るかな、と疑う時間が無い程に任務以外は彼は私にべったりで嬉しいけれどもうっとおしい時もある。でもさ、それって愛されているって事だよね?
うぬぼれてしまってるかもだけど、悟を独り占め出来るの、嬉しかったりするよ。残念ポイントもひっくるめての五条悟。そんな悟を受け入れてる。
硝子の視線はまるで過去の悟を思い出すように、ぼうっとなにもないテーブルに注がれてる。
「そうだな…あいつ、見た目だけは良いけど中身がクズオブクズだからな。それでも顔の良さと金があるから女はいくらでも寄ってくるんだ。かつてのあいつは寄ってきた女を遊んで捨てて……泣かせて…、」