第29章 赤い糸で繋がっているもの
「それ、本当?誤診だとか腫瘍だとかそういうのじゃなく?」
「はい、結果で言うと妊娠してますねぇ、ハルカさんは最終月経を覚えてらっしゃらないのと仲良しは頻繁であったとおっしゃいますから……エコーも診てみましょうか?」
……いや、そういうの硝子の前で言わなくても、と問診票の内容をべらべらと話す先生。
先生は硝子を。硝子はちら、と私を見て私は恐る恐る頷く。
お腹にぐりぐり当ててみるやつをやるのか、と。私は実際に目にするもので覚悟をしようと膝の上で拳を握りながら。
器具を突っ込みながら、腹に当てる器具で画面に映される私のお腹の中の状態。
「あー……うん、」
先生が画面を見てる。硝子を見ればじっと画面に釘付けで口元に手を当てて視線を離さない。
「うん、ハルカさん。やっぱり妊娠してるよ」
そう、なんだ…。
突きつけられた現実に白黒の画面をぼうっと眺めるしか無い。
「最終月経が曖昧だったっていうからねえ。これ、胎嚢。赤ちゃんだよ」
「胎嚢の状態での発覚となると早い方ではあるけど。先生、これ確定には早いんじゃないですか?」
「(随分と突っ込んで来るなあ…)うん、結構探したからねえ、変な病気とかじゃないし私からしたらこれは妊娠してる、と判断するよ。
私の判断が不安かもだけど、およそ二週間くらい後に検診来てくれれば成長度合いによるけど今よりもはっきり分かるようになるよ、胎嚢のこの大きさから言って今は妊娠四週目くらいだしねー…」
……。
"四週目"という言葉。それは想定外の期間で……私はてっきり一週目とか思っていたから。
『「は??」』
硝子と同じタイミングで声が重なる。硝子も医療に関わる身として私が相談してたから、それとは違う結果での言葉だったのかも。予想を裏切られて絶望とは違う意味で頭が真っ白になりかけた。
検査が終わり、椅子に座り直して。
──つまりは、その。
一週間ちょい前のカワグチ組での事件とか関係なく、普通に……?その時にはお腹に居たって事?普通に、私のお腹の中に悟との子供が居るっていう……?
……えっ?ちょっと頭が回んないな、知能がミジンコレベルになってる。
考えがまとまらない状態でカレンダーを見て話す先生。さっき硝子に誤診だとか突っ込まれたからちょっとムキになりつつあるのかもしれない。
指先で眼鏡の位置を整えた先生は言い放つ。