第29章 赤い糸で繋がっているもの
『……あの、硝子さん。明後日の休日に買い物、という体で…ちょっと私に付き合って貰えませんか?』
"……買い物って体で?本当の目的は違うんだ?……なんなの?"
『実は……、その、』
いつもの悟帰って来ないかな、というそわそわとした落ち着かない気持ちが、今この時だけは早く帰って来ないで欲しいという矛盾する気持ちになってる。少しでも遅くなっていて欲しい。今はひとりになりたい。せめて気持ちが落ち着く間だけで良いから……。
今は大好きな彼よりも同性であり、医療の知識が豊富な硝子が頼りであると悩み事を打ち明ける。
『生理が、来なくなって……』
"おっ?"
『それで、部屋にあった検査薬使ってみたら陽性だったんですけど……』
"ほー、遂にか。こりゃああの馬鹿も大騒ぎするんじゃない?おめでとう"
それは良いことだという心から祝っている声色。普通はそういうおめでたい事だと思うけれども。
『でも……もしかしたら。カワグチ組に攫われてレイプされた時のかもしれません……』
"………"
電話の向こうで沈黙が流れた。数秒、通話の状態で沈黙が流れた後に硝子は質問をしてくる。
"……相手は一応、避妊はしてたんだよね?"
『一応、ですけど。ただ、乱暴だったもんでその、外す時とかに汚れた手で新しいの着けたりとか、間接的なものがあったのは否定出来ないです……だから、今この陽性ってのは判断の誤りで、たまたま遅れてるんだって思いたいけれど、でも、こういうのってもしもの事があれば……。いつもの私のトラブルメーカーな部分の運を引いていたら…、』
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
硝子に説明をしながらも頭の中が不安で一杯で、悲しくて悔しくて涙が出る。さっき燃やしたパッケージの紙が燃えた煙のせいじゃない。もう紙は灰になった。後でこれも悟にバレないように片付けなくちゃ…。