第29章 赤い糸で繋がっているもの
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あの日常をぶち壊した、嫌な事件から暫く経った1月の中旬。
ヒサカイは処刑された。彼は死亡した、と朝食時にトーストを齧りながら、何気ない会話の中おまけ程度に悟が話していた。
その際に彼はどういった情報を流したのかの一部を聞いた。ヒサカイは私関係以外にも、セキュリティーに関する重要な事だとか虎杖や宿儺についてだとか個人に至る事も、呪具・呪物についての保管状況についても外部に漏らしていた。いくら情報を漏らしたとはいえ、非術師にどうこう出来るものじゃないけれど、と悟はいちごジャムを塗りながら笑っていたけれど。
……ヒサカイは私についての情報を漏らした際。
私が高専に学生として編入して暫くした頃にリベルタに春日の生き残りが居るという情報を売った、という。だから私は捕らえられたんだ。
そんな頃から彼に被害を受けていた、なんて思わなかった。ショックを受けながらもその矛先はもう亡き者。
それ以降に受けた被害だと私が秋に死に、悟達に蘇生された時。その入院先を院内に入院中の某貿易会社の社長に。情報をひとりに売ったのち、口の軽い社長により周りの患者に私についての話が広まって、悟から聞いた通り病院から高専に連れてこられた経緯の元凶になってる。
意識の無いままに治しまくってたっていうね…。
その後は私が負傷を治す事も移す事も含め、更に女を産めば継承されるという事を含めあちこちに情報を売り、特に大きな動きを見せたのはカワグチ組だったって事で。情報だけじゃなく直に売りにヒサカイが動いたんだってさ。
彼が死んでも安心は出来ないって事。個人なりグループなり握られた情報はあるのだから、まだ動きを見せていない奴らが居るという事。油断したらまたあの悲劇が起きかねない。
だから特にひとりの時はストレスを抱えながら部屋で過ごしてた。
学生の冬期休暇も終わり学校生活が始まる。座学は良いとして寒空の下の体術はガッテムコールド。寒すぎて笑えん、朝も布団から出たくないし筋肉が良く着いた悟から離れたくない(ぽっかぽかで暖かいから)
部屋の構造や暖房の事を考えると、寮よりもマンションの方が快適だった。週末は寮じゃなくてあっちで過ごさない?って悟に頼もう。彼が任務で居ない時は退屈だけど、寒いのは耐えられない。そう考えてた平日のある日だった。
放課後になり、寮へと帰った私は部屋の掃除をしていた。